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新緑の香りと澄み渡る青空
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「春乃様、頑張りましょうね!」
騎馬戦が行われる場所に向かいながら、優李がそう話しかけてくる。
周りのガヤガヤとした特殊な雰囲気に落ち着きのなさを感じていた俺は、「…そう、だね」と曖昧な返事を返してしまった。
「…具合が、悪いんですか?」
言葉を発してから語尾を伸ばしていなかったことに気づいた俺は、我に返ってはっとする。
「悪くないよお~勝てるか考え込んでたら心配でボーっとしちゃったんだあ…だって、ゆうゆうに怪我されたら困るもん」
「ぼ、僕は大丈夫です!春乃様と一縷様のご迷惑のないように全力を尽くすだけですから…って……あれ、一縷様は?」
「一縷…っちは見回りに行ってるだけですぐ来るよお~」
―あれから。
俺と一縷は以前とは違った意味でよそよそしくなってしまった。
以前が「嫌悪」だとしたら、今は「躊躇い」と言い表せばいいのか…
突然起こった変化に、晒してしまった本当の俺。
知られてしまった以上、チャラチャラした俺で接しようとすると激しい嫌悪感が体中を襲うのだ。
また一縷も、俺がいつもと変わらぬ口調で話しかけると、少し困ったような表情を浮かべる。
以前は苛立ちだったものが、悲しみに変化したような、そんな。
お互いにどこまで踏み込んだらいいのか分からない、見えない境界線に戸惑っていた。
多分、勇気を出して踏み込めば一瞬で光がもたらされる筈なのに。
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