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夏の花火と泡沫の心
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「…桜川?あれ、会長はどこにいんの?」
タイミング悪く一縷の声が頭上から降ってきた。
俺は真っ赤になっている頬を見られたくなくて、咄嗟に顔を背ける。
前にもこんなこと、あった気がする。
あの時は零れ出す涙を見られたくなくて、顔を背けたんだ。
月明かりの夜道に散りばめられた桜の花びらが広がっている、そんな夜だった。
「会長は、帰ったよ。…忙しい、みたい」
まさか「今さっき告白されたんだ」なんて言える訳もなく、俺は途切れ途切れに嘘を紡ぐことしかできない。
「…いきなり帰るか…?てか、顔真っ赤なんだけど。どうしたの、ってくらい。暑いのか?とりあえず、人のいない場所に移動しないか?」
「…あ、うん」
おさまれ、おさまれ…
鳴り止まない鼓動が脈拍を下げるどころか、一縷が来たことによって寧ろ上がってしまった。
…お願いだから、収まって…っ…
人混みの中ではぐれてはいけないと思ったのだろう。
一縷に左手を掴まれた瞬間、ただでさえ激しい鼓動がこのまま倒れるんじゃ、というくらいまで激しくなった。
…これ、絶対伝わってる…
これは会長に告白されたことによるドキドキなのか、…それとも…
違う、駄目だ……
こんなんじゃ、前と同じじゃないか。
また前のようになってしまう。
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