アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
-
ある意味静かな廊下に響き渡る足音
その音でピタリと会話が止まる
死刑になるわけでもないのにおかしな緊張感が漂う空間
徐々に近づいてくる足音は俺達の鉄格子の前で止まった
「新入りだ」
それだけ言って看守は消えた
新入りね・・・こんなところに来ると言う事は相当な悪党って事かな
でも悪党にしては震えている
暗くて顔がよく見えないけど震えているのはわかる
「新人か~、暇つぶしにはなりそうだな」
「そう言う事!おい、まずは氷龍さんからだ」
「氷龍さん、どうぞ」
ホント、悪趣味
無抵抗な人間を押し倒し手足を掴む虫けら共
「さぁ、氷龍さん」
さぁ、どうするのかな
氷龍って雑食なのかな
と言うかこんな事をしなくても相手に困る奴じゃないはずだけど
「氷龍さん?」
動く気配はない
読んでいる小難しい本を閉じる気配もない
「じゃ、俺達がいただきます!」
さぁ、新人君どうするの?
身を護る方法は見つかったのかな?
「大人しくしていろよ」
「クスッ」
「何だこいつ・・・もしかして気でも狂ったのか?」
確かに聞こえた笑い声
その笑い声を聞いて氷龍も視線を向けた
「何だお前」
「抱くのは勝手だけどさ・・・いいのかな?」
「は?」
「俺、HIVなんだけど」
「えっ?」
「しかも末期、だからむかつく相手を片っ端から殺したんだ・・・どうせ死ぬんだし」
「お前・・・て言うかなんだよそれ!」
「エイズだけど」
「えっ!」
「さぁ、どうぞ」
「・・・・・・・」
「どうしたの?死ぬのが怖いとかじゃないよね?」
「ば、バカ言うな!使えねーな、クソッ!」
病気ね
面白いけど騙されているのは俺達以外だけ
「あんた達はどうすんの?俺とやって一緒に死ぬ?」
まだ若い男
確かにここではおもちゃにされてしまいそうな顔だ
「面白そうだね、どうせ生きていても仕方がないし・・・」
「えっ?」
顔色が変わった
ホント、わかりやすいね
「脱いで」
「・・・・・・・・・」
「どうしたの?」
「どうして俺から脱がなきゃいけないわけ?意味わかんないんだけど」
「確かにそうだね」
手首を掴んで顔を見つめた
「名前は?」
「は?」
「は・・・っていう名前でいいの?」
「ふざけんな!頭おかしいんじゃない?」
「ここにまともな奴なんかいないよ、知らないとは言わせないけど」
「・・・・・・・・・・」
「名前は?」
「・・・・・・・・燕羽」
「チャイナ?」
「母親が」
「そう」
「はやくしたら?」
「結構楽しめたし俺は寝るから」
「えっ?」
「隣でもいいのならどうぞ、床は冷たいしね」
「でも」
「性欲を紛らわせるために暴力に走るような連中かもね」
「ひっ!」
「まぁ、もしそうなったとしたら燕羽の血液を口の中に流し込んでやればいい」
「・・・・・・・・」
「でも確実に仕留めたいのなら傷を負わせてからの方が確実かもね」
「寝ます」
「クスッ」
「正気かよ・・・移るんじゃないのか?」
「まじこいつ迷惑じゃん」
ホント、バカな連中
エイズは唾液や涙では感染しない
もし本当に病気ならね
「あの」
「・・・・・・・・」
「ありがとう」
「ここにゴムがなくてよかったんじゃない?」
「・・・・・・・・・」
「こいつらはバカだからゴムがあったら何重にも重ねてやられてたかもね、苦痛しかないやり方で」
「あの、名前」
「・・・・・・・・・」
「あっ、そのピアスダリアだ」
「知ってるの?」
「母が育ててたから」
「そう」
「じゃ、ダリアさんって呼ぶけど」
「楓」
「楓・・・さん」
「楓でいいよ」
「うん、おやすみなさい」
燕羽は何をしにここへ来た?
さっき手首を掴んだ時に気付いた無数の傷跡
しかもかなり深かった
それでも死ねないなんてね
「怖いの?」
「すごく怖かった・・・本当は怖くて怖くて」
「まだ震えているね」
「止まらないんだ」
「俺が知っている止め方は一つしかないけど」
「えっ?」
震える燕羽をそっと抱きしめて目を閉じた
「止まった・・・かも」
「みたいだね」
「でもっ・・・お願いこのままで」
「わかった」
燕羽の体温は高くて心地よかった
「ぐっ!」
「嘘・・・殺人的な寝相の悪さ」
しかも動かないしそろそろ限界かも
「ほら」
「えっ・・・ありがとう」
俺がどんなに頑張っても動かせなかった腕を簡単に持ち上げて助けてくれた
この人は誰?
「本人は寝相の悪さに全く気付いていないからな」
「死ぬかと思った」
「楓の好きにさせてやろうと思っていたが、お前の呻き声で目が覚めた」
「ごめん」
一体、楓はこの中ではどんな存在なんだろう
と言うか、ベッドで眠っているのは3人だけ
他の奴らは床の上で震えながら眠っている
「まぁ、何でもありだから気にするな」
「あの」
「俺の隣でもいいなら来い」
「あのっ!」
「何だ」
「名前」
「冬矢だ」
「冬矢・・・さん」
「寝るぞ」
「はい」
これは助けてもらったのかな
「クスッ」
「な、なに?」
「いや、お前の言葉を思い出しただけだ」
「へっ?」
「エイズねぇ・・・」
「仕方ないじゃん・・・抵抗しても無駄だろうしでもやられたくないし」
「自分からばらすようじゃまだまだだな」
「あっ!」
「まぁいいや、寝ろ」
「うん」
俺だって必死に考えたんだ
すごく嫌だったけど一番身を護るには最適だと思ったのに
初日にばれてしまうなんて
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 99