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side 桐生
瀕死状態の隼人が回復したのはあれから2週間経った頃。
久しぶりの休日、飯窪が積み上げていた小説のお下がりを数冊借りて自宅で読みふけっていた時、院長から一本の電話が入った。
『桐生くん。お休みのところ申し訳ないね』
「いえ」
『実は、ほんの少し前に隼人くんが目を覚ました』
「え…」
心なしか院長の声音は暗いものだった。
目を覚ましたのに、何故。
『だけどね、どうやら、残ってしまったみたいなんだ』
「残る…」
『……熱の、後遺症が』
「は……?」
『いやね。まだ分からないんだけど』
「後遺症って、どんな」
『………………記憶が、ないみたいで。文字や言葉を一部と、人の名前や顔まで…』
「…………」
『でもさ、桐生くんの顔なら覚えているんじゃないかな?ほら、主治医だし、仲が良かったでしょう』
医者なら分かるだろう。
そんな奇跡のようなおとぎ話が存在しないことくらい。
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