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そんなんじゃない。
心が綺麗なんて。
そんなわけないのに。
「ふ…ぅ…うぅ…ううう…」
ボロボロ涙が溢れる。
今の桐生先生と院長先生の言葉が頭をぐるぐる回って。
嬉しくて嬉しくて。
ずっと溜まってたモノが流れていくように涙が止まらなかった。
桐生先生はそんな俺の頭をポンポン撫でてくれた。
部屋の前で泣きじゃくる俺を誰も責めなかった。
「キリちゃんのくせに…っ…こんなに優しいなんて…」
泣きながら、ちょっとした抵抗をする。
「キリちゃんって呼ぶな」
「キリちゃんのくせに…っひっくっ…」
この時から俺は桐生先生をやめて、キリちゃんと呼ぶことにした。
キリちゃんと院長先生とは他の先生より一足早く馴染んで、この2人に反抗したり八つ当たりすることはほぼなくなった。
乃木先生は何もできないただの研修医で、時間が経てばいなくなるのを知っていたから最後まで反抗し続けてしまった。
わざとじゃないんだけど…。
今思えば、特別敵視していたようにも思える。
「隼人くん、今日は桐生先生お休みだから、僕が採血するね」
乃木先生の採血は何回か経験がある。
痛い。
へたくそ。
キリちゃんは上手なのに、乃木先生はすごくへたくそ。
「痛いからしない」
1人部屋になって気持ちは落ち着いていたのにこの人が来ると何故か乱れる。
イライラする。
「やらないと怒られちゃうよ」
怒られてもいいから。
痛いのは嫌。
「練習したから。お願い」
しつこい。
練習なんてしてないくせに。
「しょうがないね。桐生先生に来てもらおう」
言われて焦る。
頑固な俺のせいで休日出勤なんてそんな迷惑はかけられない。
「ん。痛くしないで」
「ありがとう」
仕方なく腕を出すとぷるぷる震える手で針を刺した。
やっぱり痛い。
練習とか、やっぱり嘘だよ。
痛いけど、血を抜かれてクラクラする。
60cc。
取り終える前に気絶してしまった。
いつもは気絶まではしないのに。
目が覚めると目の前には私服姿のキリちゃん。
険しい顔をして注射をいじっていた。
休日出勤させちゃったんだ。
最悪。
「…キリちゃん」
喋ってから気付いたけど、酸素マスク付けられてる。
「ん。起きた。気分は?」
「ボーッとする。今何時」
「23時」
うわ…めっちゃ寝てた。
「…ごめん。休日出勤…」
「そんなの気にしてないで寝てろ」
「ん。ごめん」
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