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陰謀
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帰還の魔法陣で戻った先には、ボロボロの兎御一行。兎だけは傷一つなかった。
「遅い! 何してるの!」
いきなり兎が俺に怒鳴って散らす。
遅いって約束してないよね?
どうしていいか分からず、アルの服を掴む。アルは冷たい視線を兎に向けたまま俺を抱き上げた。
「何してるの? 早く治療してよ! それぐらい気を効かせてくれてもいいんじゃないの?」
何故、俺は命令されてるんだろう?
普通は「お願い」って縋るところだよね?
「ラピヌさん、その方たちはグループメンバーでないですよ。そんな言い方は間違えてます」
あの人だ。あの人の腹部からは大量の血が流れてた。
「スノウさん! 無理しないで!」
兎が、あの人に駆け寄り体を支える。あの人の名前はスノウって言うのか。
「離して下さい。自分は大丈夫だから」
「【範囲治療(オールハイルミッテル)】【範囲回復(オールヒール)】」
見ていたくなかった。一刻も早く、この場から立ち去りたい思いから治癒魔法と回復魔法を使う。
「アル、行こう」
後ろで兎が何か喚いているが、アルを急かした。
◇◇◇
翌朝ーー。
テントの外に兎御一行が待ち構えていた。
「一緒に帰ろうよ」
何で?
俺がそれを口にすれば兎は煩いだろうから、心の中だけで呟く。
「俺たちは薬草集めしてから帰るんだ」
だから一緒には帰れないとアルは告げた。だけど、兎の顔は笑顔になる。
「僕も薬草集めしないといけないんだ。僕たち縁があるね」
奇遇だねと兎は言うが、態としか見えなかった。
兎が冒険者登録したなら偶然でも何でもない。兎自身ランク上げるのには必須な事柄だし、こちらが言ったことに合わせればいいだけ。
「俺たちは俺たちだけでやる。お前らはお前らでやれ」
アルはそう言い捨てて、魔馬に跨る。
目的地の森へと向かうが後ろから兎御一行も着いてきた。
「アル着いてくるんだけど、やっつけちゃダメ?」
「決闘以外で魔法や武器を使って攻撃するのは法で禁じられてる」
マジか……。
てか、拳を使っての暴力ならいいの?
魔馬を走らせ続けて半日、目的の森に到着した。休みなしで頑張ってくれた魔馬たちに飼い草と水をやる。
「お疲れ様」
首を撫でて労わったら嬉しそうに目を細めた。
薬草集めしようと、振り返ると遥か先に兎に腕をぶら下げて進むアルの背中が視界に入る。
いつの間に……。
何で? 兎を引き剥がさないの?
無理矢理なのかもしれないけど、アルだったら力づくで、どうにか出来るよね?
ティグさんとマレーさんは、それぞれヴォルフさんとホークさんに引き摺られている。
ナニコレ? イジメ? 俺ひとりぼっちにされたの?
別に急いで薬草集めないといけないわけでないし、帰ろうかなぁ。転移魔法を使えば、街までならいけるしね。
そう考えてると、後ろから肩を掴まられる。振り向くと、スノウさんがいた。
「これは貴方の差し金ですか?」
「オレは何も知らないです。貴方が魔馬たちを労わっているのを微笑ましく眺めていたら、こうなっていました。すみません」
スノウさんは眉を下げシュンとしてる。
「別に貴方が謝る必要ありませんよ」
「いえ。今回だけとはいえ同グループですから」
ダンジョン巡りのためだけに入ったのか。そう考えると、スノウさんのが気の毒だ。
「お疲れ様です」
「ありがとうございます」
会話は終わりと、俺は森の中に入った。彼が近くにいたら帰れるものも帰れない。人間は魔法が使えないのが、通常みたいだから転移なんて特殊魔法を使ったら、色々と疑われそうだ。
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