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☆雨【2】フジヒラ
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あの後、家までどうやって帰ったか覚えてない。
ただボーッとして気付いたら自分の家の玄関に居た。
どっと疲れが襲って来て結局すぐに布団に潜ったんだっけ。
(はぁ…寒っ…)
今日も相変わらず雨が降っている。細雨をただただ見つめていた。
昨日、雨の中棒立ちで号泣したから風邪をひいた。
多分家に帰ってろくに体を拭かずに寝たからだろう。
とても体調が悪い。頭痛と寒気が体を支配している。
(今日はベットから動けないかもなぁ…)
そばにあった手鏡を取り、自分の顔を見る。
(ひっどい顔…目腫れてるし、いかにも不幸ですって感じ…)
スマホを見ようと思ったらカバンの中に入れっぱなしにしていたのを思い出して、のそのそとベットから這い出て、リビングまで行った。
昨日使ったカバンはソファーの上に放り投げられていた。
(昨日荒ぶってたんだろうなぁ…乱雑)
スマホを取り出し、開くと10件くらいLINE通知が来ていた。
それは全てフジだった。
一瞬見ようかどうか戸惑った。
あんな現場を見てしまった訳だし、直接顔を見るのでは無いとしても既読を付けるのがなんだか気まずく思えてしまった。
しかし、このまま未読と言うのも性にあわないので、とりあえず開いて中身を見た。
―――――――――――――――
ごめん、携帯の電池切れてたみたい。
ヒラ、今何してる?
もしかしてヒラ家に来た?
傘置いてあったよ。
合鍵渡してるのヒラだけだし、ヒラだよね?
見ちゃったよね…?
今から会えないかな?
返事待ってるね
おやすみ
―――――――――――――――
フジから来たLINEを見たらまた涙が出てきそうだ。
見ちゃった?ってことは認めるってことだよね…
俺はフジにこう返信をした。
――――――――――――
会えないし、今とても会える気分じゃないよ。
分かるでしょ?
あと、風邪ひいてて体ダルくて外出られないから。
――――――――――――
今度はすぐに既読がついて、返信が来た。
――――――――――――
そうだよね…ごめん。
でも会ってきちんと話がしたいから、また1週間後に会わない?
――――――――――――
本当は会いたくない。
でもちゃんと会って話がしたいのは俺も同じ。
画面越しじゃ伝わらないことだってあるから、仕方なくフジと会うことを了承した。
――――――――――――
うん、良いよ。
じゃあ、1週間後の午後4時に家の近くの公園まで来て。
――――――――――――
それからフジは「わかった」という返信以外何も送ってこなかった。
でも、それは逆に好都合だ。今色々言葉を投げかけられるとまた泣いてしまいそうな気がするから…
目にじわっと涙が浮かんで零れそうになる前に、掛布団を頭から被って布団に丸く埋まった。
布団を被っても雨の音はしつこく耳に入ってきた。
涙を流したくないのに、雨の音に促されて枕ベットに涙のシミを作った。
認めて欲しくなかった。
嘘でも良いから、やってないとか言って欲しかった。
それはそれで嘘をつかれたって泣くかもしれない。
でも、それでも、認めて欲しくなかった。
理由なんか分からない。何で、女の人と抱き合っていたのかも、何でその人に好きって顔を向けてるのかも。
何で言ってくれなかったんだろう。
もう好きじゃないって。
男同士なんて気持ち悪いって。
本当は女の人が好きなんだって。
もし本当のこと全部言ってくれたなら、潔く諦められた気がするんだ。
別れてって言ってくれたならフジに対する心なんか捨てられた気がするのに。
どうして何も言ってくれないんだろう。本当のフジが分からないから色々考えちゃうよ…
色々考えたら胸がズキズキするんだ。
フジがもう俺のこと好きじゃないって、そう考えたら胸が締め付けられるんだ。
(ああ…まだフジのこと好きなんだなぁ…なんて未練がましいんだろう…)
このズキズキを忘れられる様に、眠りについた。
頭痛もしたし、体もだるかったからすぐに寝られた。
雨は止む気配なんてなかった。
むしろこれから暴風雨になりそうな、そんな予感すらした。
雨の音はしつこく地面を叩きつけていてうるさかった。
けれど、そんな音ですら今の自分には心地よく感じた。
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