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混乱する狐と形勢逆転した狼
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「どっどういうことだリョウヤ!引退する、だと?」
先ほどまでの涼しげな声音が一気にひきつっている。
それほどまでにリョウヤの一言は青村の心を揺さぶったのだろう。
実を言うと僕の思考まで揺さぶっていった。
今、リョウヤは何と言ったのだろう?
「言葉の通りだ。お前にくれてやる前に俺は引退してコウスケに後をすべて任せる」
まだショックが抜けない青村は「ふざけるな!」と怒り狂ったまま足をふみならした。
つかまっている僕にもその強い振動がつたわる。
振動だけでどれほど動揺しているのかこんなにもわかるものなのか。
また僕は一つ賢くなった。これ以上賢くなってどうすんだ!
結構阿呆なことを考える余裕が戻ってきたのは、きっとリョウヤの躊躇いのない選択のおかげだ。
彼は、どんな状況でも僕を見捨てないでいてくれる。そんな確信めいた思いが、嬉しいんだ。
「ふっふざけるな!貴様は!貴様はリーダーとしての自覚と誇りがないのか!」
青村はきっと自身が大量の人間をまとめるえらい人間だと思っている。
つまり彼は大切な女性が出来てもすっぱり切り捨てられるある意味で重要なリーダーシップを持っているのだ。
リョウヤはその逆、まさに真逆だ。
青村の顔は見れないがあからさまに混乱していた。
ぼくに突き付けていたはずのナイフはその手にはもう見られない。
不測の事態にとことん弱い理詰めの坊っちゃん程度だったんだね。
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