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狼の愛なのだ
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「甘くなったんじゃないのかリョウヤ!俺は、俺はこんな奴にいつもいつも苦い汁を吸わされていたというのか!ふざけるな!」
半狂乱に陥っている狐が僕には愚かにして見えない。
結局のところ、彼は根本的なところで読み違えていたのだ。
リョウヤの性格を特異性を。
狼は無表情のままおとしたチームの象徴である赤を見下ろし囁く。
「おれについてきてくれたあいつらなら、俺がこうするとわかってくれるはずだ」
「一時の感情で全て捨てるのか!?馬鹿か!この世界から足を洗ってもいまさらお前に居場所なんてないだろう!」
「お前は俺に去ってほしいのかほしくないのかどっちなんだ」
呆れ顔で髪の毛を掻きむしる。
余裕しゃくしゃくな態度と、半狂乱。
まさに逆転劇をこんな間近で観賞できるとは。
しかも僕も登場人物の一人なのだ。
自惚れでもなく、こういえる。
「いいか。俺は愛する者を守るための我儘が通らない立場なんていらない。全てをその人のために捨て去る覚悟が、俺の愛だ」
リョウヤは僕を本気で愛してくれているのだと。
あっけにとられて動きがとまっている青村の足を思いっきり踏みつける。
「んぐがっ」と不意の激痛に拘束の手が弱まった。
そのまま逃げだした僕の髪の毛にすがるように手を伸ばし、やや乱暴な力で引き寄せようとした。
「やーだ。そんな強い力で引っ張ったらとれちゃうじゃん」
お気入りのウィッグ越しにウインクしてみせると、青村は完璧に度肝を抜かれていた。
顎が外れかけていたのが滑稽でこの先しばらく笑いの種に使えそうだな。
そんな意地の悪いことを考えている僕の隣を、猛スピードで駆け抜けていく黒い影を振り返る。
きたえ上げられた拳を躊躇なく青村の顔面に叩き込んでいるリョウヤを見ることができた。
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