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悪いやつではなさそうだ
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「おい何ふらついてんだ」
車で数十分後、やっと停車したワンボックスカーをふらつく足取りで降りていると、坊主頭が声を掛けてきた。
「大丈夫…じゃねーよばーか」
頭と胃の中がぐちゃぐちゃになっていたので、僕はろくに返事をするができなかった。
一気に目つきが鋭くなった坊主頭を見て、誘拐された身なのに生意気な口をきいてしまったと後悔する。
殴られる、と目を閉じると支えていた手が暖かい体温に包まれる。
目をあけると僕の右手をぶっきらぼうな面でとった坊主頭がいた。
「さっさと降りろや。リョウヤさんまたせんじゃねえ」
「あっありがとう…」
煮え立つ胃液を飲み込み、僕がお礼を言うと鼻を鳴らして手は振り払われてしまった。
少しだけ楽になった僕は連れてこられた建物を改めて見上げた。
ぼろぼろとはいかないが、年季の入った三階建てビル。
無法地帯で育った蔦がところどころに体を巻きつけて微かながらも緑をはやしている。
一階と二階の間には大きな看板が飾られているが、何と書いてあるか全く読めないほどに廃れている。
いかにも幽霊や不良がたまり場に使用してそうな建物だ。
僕は恐怖を生唾とともに飲み込み、坊主頭の後に続いた。
とくに拘束具などはつけられていないので、逃げ出そうと思えば逃げ出せるだろうが、背後にびっちり並んだ坊主頭と同じシャツを着込んだ男たちがいるので、早々に逃走の選択肢は捨てた。
「誰と会えばいいんですか?」
汚い廊下を歩む最中、押さえきれなかった疑問がこぼれおちた。坊主頭が足を止めてぎろりと睨みつけてきた。
「リョウヤさんだよ。詳しい話は中で聞け。おれは何も知らん」
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