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「とにかく金塚に連絡を取れ」
そう鳴瀬に言われた冴島は、焦る気持ちを押さえて携帯の画面をタップする。
もし、昨日のせいでまた金塚が自殺を図ろうとしていたら、それはすでに間に合わないのかも知れない。そう思うとどうにもこうにも焦ってしまってならない。あの時自分が寝なければ…、あの情事を見てすぐに止めに入っていれば…、今の何かは変わっていたのだと思う。
呼び出し音が5コールも鳴ってから、漸く金塚は応答した。
「…んだよ、うるせぇな。」
「おはよう」や「お疲れ」という挨拶よりも先に飛び出す悪態に心底ホッとした。こんな事は入社以来初めての事だ。
「おはようございます金塚さん」
「あぁ?挨拶なんていらねぇから要件を言え。また変なミスしたんじゃねぇだろうな。」
「要件…要件、ですか。」
「…おまえ何の為に電話して来てんだ。俺はおまえと仕事中に電話で世間話する様な関係じゃねぇぞ。」
「そうですよね。要件…要件…」
「あのなぁ…」
「あ!ありました!」
「はぁ…なんだよ」
「俺、金塚さんに会いたいです。」
冴島から言われるはずもない台詞に、金塚は携帯の画面を見る。確かにそこに表示されているのは冴島の名前だった。
「…おまえ、大丈夫か?」
「はい。俺…ちゃんと金塚さんに会いたいんすよ。だから今日来てくれますよね?」
「……なんなの、おまえ。意味分かんねぇよ。」
意味なんか分からなくてもいい。ただ普通に昼から当たり前の様に出社してくれて、今みたいに馬鹿だなんだと悪態を吐いてくれたらそれで構わない。
多分きっと、鳴瀬もこういう気持ちなのだと理解する。
「待ってますから。」
「行くよ。おまえに言われなくてもな。」
そう言って一方的に金塚は電話を切る。
ベッドの中で身動ぐと腰に鈍い痛みが走る。
忘れていない。
忘れられない。
3年前のあの日の事。
昨日のせいでまた思い出し、そして上塗りされて行く。
「っクソが…」
悪態を吐かなければ、纏めな精神ではいられない。
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