アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
59
-
営業部のフロアに戻ると、皆の視線が一瞬金塚に集まる。その視線に気づかぬふりをして、金塚は静かに冴島の後ろに立った。
「おはよう。」
「あ、おはようございます。」
何事もないかの様に挨拶を返す冴島に、わずかな苛立ちを覚えた金塚が、そっと肩に手を置いて耳打ちした。
「体、痛くないか?」
ふわっと舞う金塚の香り。それが冴島の鼻腔をかすめると、心臓がそれに呼応する様に鳴る。耳元で囁かれた甘く緩やかな低音と、わずかに鼻にかかった様な声がより色っぽさを増す。
その言葉のチョイスはわざとだろうか。
「へ、平気っす」
「ふぅん…俺はバッキバキだけどなぁ」
「それはあんなところで寝るからですよ…」
「おまえが引き止めたんじゃないか。ソファーに座らせて肩を抱いたのはどこのどいつだ。」
「俺ですけど、その言い方やめて下さいよ…!なんか変な感じするじゃないですか!」
「別に変じゃないだろ。事実を言ったまでだ。そんでもって置き去りにされたしな。」
「だから人聞きが悪いですって!置き去りってなんすか!ぐっすり寝てたから起こすのも可哀想だなって思ったんですよ。金塚さんは昼から出勤するだろうから良いかなって。」
冴島がそう説明すると、金塚は「ふぅん」と言ってその場を去って行く。これまでだったらそれを気にも留めないだろうが、今日はそれを放っておくことも出来ず、自分のデスクに座ろうとする金塚の元に駆け寄った。
「な、なんか怒ってます?」
「別に怒ってない」
「でも機嫌悪いじゃないですか」
「……」
何が期限を悪くさせてるのか冴島にはさっぱり分からない。期限を取ろうにもどうしたら治るのか分からないので、困惑するしかない。
金塚はそんな冴島を一瞥してからポツリと言った。
「目覚めて1人にされてるのは…なんかやだ」
言ってからふいっと視線をそらす金塚。
そして、それに心臓を鷲掴みされた冴島がそこにいた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
59 / 143