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金塚への気持ちを再確認したところで何もできない憂鬱な気持ちを抱えたまま、昼頃まで黙々と仕事をこなしていた冴島のところに鳴瀬がやって来た。
「冴島」
「はい」
「昼ご飯まだだろ?社食に行かないか?」
あまりお腹が空いてはいなかったが、他に特別断る理由がなかったので行く事にした。
社食でアイスコーヒーを買うと、鳴瀬に不審がられたが、腹が減っていないと伝えると心配された。多分、金塚と一緒に朝食を食べて、いつもよりしっかり食べる事になったからまだ腹が減っていないのだ。
鳴瀬のカツ丼が出来るのを待ってから空いている席に着く。向かい合わせに座っているものの、お互い顔を見合わせる事が出来なかった。
そんな状況下で先に口火を切ったのは鳴瀬だった。
「最近、金塚と仲が良さそうだけど急にどうしたんだ?」
鳴瀬はカツ丼を頬張りながら言う。そんなに気にしているわけじゃない、という素振りを見せているが、実際は気になっているのが冴島には分かっていた。
「まぁ…あの一件がなければ金塚さんの事は嫌いなままだったと思います。けど、鳴瀬さんから聞いた話とか、金塚さんが話してくれた事とか仕事でもいい加減に見えて真面目だったり、実力があったり、そういう本当の姿に気付いて、俺自身驚くくらい金塚さんへの考え方は変わりましたね。」
「そうか。いきなり泊まりまでしたんだろ?」
「えぇ。仕事で分からないことがあって、電話で確認してたんですけど、資料見なきゃ分からないって言われて。」
「それで金塚の家に行って結局泊まったわけだ。」
「えぇ、まぁ。」
泊まることになった本当の理由は言えるわけがない。それに、言いたくない、と思ってしまう。
強引なところがあったにしても、金塚は冴島からのキスを受け入れてはいた。
他の男に嫉妬すると言うと、ほんのりと嬉しそうにしていたりして、金塚ももしかして…と思わなくもないが、まだそれを追求するには至っていない。
でも昨日の甘い空気は本物で、そんな姿を見たのは自分だけだと冴島は思いたかった。
「その…なんだ、おまえは、“そういう意味”で金塚を見てたりは、するのか?」
ひどく言いづらそうに鳴瀬が言った。その顔を見れば、目線は今もカツ丼を見つめたままだ。
「…そういう意味って、恋愛感情って事っすか?」
冴島が核心をついて、ようやく鳴瀬と目が合った。驚きと戸惑いと不安の中に、敵対心も混ざっている複雑だが明確な感情が読み取れた。
「まぁ、そうだな。」
「ありますよ。めちゃくちゃそういう目で見てます。」
「…そうか。」
「鳴瀬さんもそうですよね。」
冴島が迷いもなく言うと、鳴瀬は純粋に驚いた顔をした。
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