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「あ、お願いがあるんですけど。」
冴島は良いことを思いついたと言わんばかりの笑顔を向けてきて、金塚には嫌な予感が拭えない。
「聞くだけ聞くのは有り?」
「…まぁ、出来れば叶えてもらいたいですけど。」
「…いいよ、何?」
「夜ご飯を作った日は一緒に寝るのもセットにしてくれませんか?そのかわり食費はもらいません。」
「つまり食費を添い寝で支払えって事?」
「そういう事になりますね。」と冴島が笑った。酷く困るようなお願いでもないが、それで何がどうなるのかが分からない。少なからず金塚に好意を持っているのならば、嬉しいは嬉しいのか。けど、そんな事で?という気もするし、かと言ってそれ以上を求められても受諾出来ない可能性もある。
「それで、おまえの気が済むのなら…」
「え、本当ですか?やった!」
そんなに嬉しいのか。
子供の様に喜ぶ姿に金塚は内心驚いていた。
まさか、本当に自分の事が好きなのか。
あんな姿を見せられて、何故。
「なぁ…」
気持ちを確かめてみたいと思ったが、一度開いた口は結局そのまま閉じてしまった。「なんですか?」と聞き返してきたが、「なんでもない。早く食べよう。」と言って誤魔化した。
エビフライなんて久しぶりに食べる。
金塚は子供の頃を懐かしむ気持ちで頬張った。それを微笑みながら見つめてくる冴島に、金塚は気づかないフリをする。
「食後のデザートも用意してるので良かったら」
「…おまえ、完全に俺を餌付けしようとしているな。」
「はは、バレました?でも食べるでしょ?」
「食べる。」
デザートと言っても冴島が作ったわけではなく、冷蔵庫から出されたのは牛乳プリンだった。嬉しいけど、これはこれで気まずい。嫌でも昨夜の事を思い出してしまうからだ。
金塚の目の前に置かれた時、耳元で「今日はこぼしたらダメだよ」と冴島が囁いた。鼓膜を刺激された事と、昨夜の出来事を示唆された事で、金塚の顔がボッと熱くなる。
「そういうの、やめろよ」
「どういうの?」
「だから、その…」
いい歳をして年下にからかわれて、しかも顔が赤くなるなんてとんだ恥さらしだ。元々恋愛事やそういった駆け引きは得意じゃない。経験がないわけじゃないが、豊富でもないのだ。求められる事があっても、明らかに下心の塊の様なものばかりで、そこに心が伴うことは少ない。こんな風にじわじわと攻められる事に金塚はてんで慣れていなかった。
「…意外なんだよな。」
しどろもどろで挙動不審になった金塚を見て冴島が言った。
「何が…」
「やっぱり俺の勝手なイメージなんだけど、もっと性に奔放なイメージだったのに、凄く初っぽい反応をするし、昨日のキスをしてた時も、全然ついて来れてないっていうか、ついてくのがやっとみたいな感じで凄い可愛かった。」
「んなっ…」
「仕事してる時なんかバリバリなのにね。」
「それとこれとは関係がないだろ!」
「でもギャップはあるよ。」
「う、うるさい!」
これ以上なにかを言われると、また顔が熱くなりそうで困る。からかわれてるのか、純粋な感想なのか。冴島の事だから後者には違いないけど、それはそれで、黙って聞いてはいられない。
少し震える手でプリンの蓋を開けると、勢いで少しだけ中身が漏れた。「だからこぼしちゃダメって言ったじゃないですか」と笑う冴島に手を取られ、わずかについた物を舐めとるように舌を突き出された。
なんでコイツは平気ですぐに人の手を舐めようとするのか。
なんだかそれに腹が立って、気付けばその手を握りしめて冴島の頭にゲンコツを食らわせていた。
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