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はじめの一歩①
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***
俺達が名乗り出ると、すぐさまクラスリーダーは決定した。
「よろしく頼むぞ、クラスリーダー、副リーダー」
「「はい」」
担任の挨拶に俺と淳は応える。クラスも「やっと人柱が決まった」と言わんばかりの晴れやかな表情で拍手をした。そのタイミングで放送が入り、担任が呼び出しを喰らう。
「級長、連絡事項を伝えたら解散で良いからな。後は任せたぞ」
指示を残して出ていく担任を背に、級長は「渡りに船」とアイコンタクトを寄越してきた。俺も小さく頷く。
「今日の級長会議でお知らせがありました。最近校内で無差別ないじめや恐喝が多数発生しているそうです。みなさん、校内を移動する際はなるべく一人にならず、また、ひと気のない場所を通るのはやめましょう。……との事です」
芋瀬の事だとピンとくる奴、来ない奴。クラスの反応はまちまちだ。級長は硬い声で口火を切る。
「……そこで、ぼくらから皆さんに提案があります」
「宰次くんが、襲われた時の対処法を教えてくれるそうなので、興味のある人は放課後残っていて下さい。以上です」
急に何を言い出すんだ、とチラチラと遠慮がちに視線が向けられる。俺の事をとっつきにくく感じている奴らも多いだろう。少しだけ口の端を引き上げてみるが、愛想を振りまくなど、どうにも俺の性分ではない。
「聞いてて損はないと思うよ~!」
こういう時、淳が傍に居ると助かるなと思う。
「も~宰次がもっと早く護身術を教えてくれてたら僕もこんな風にならなかったのにっ!ねぇ!」
「お、お前それはシャレにならん……」
ざわつく教室。興味があってか引かれてか、どちらの意味かは分からない。そもそも護身術が絶対に役立つかも定かではない。……が、願わくばこれを切っ掛けにもう一歩踏み込んでクラスに馴染めればと思っている。
クラスリーダーとしての思惑が半分、いち個人としての願望が半分、だ。
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