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宰次様とDクラス①
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Dクラスに移動してから二週間ほどが経過した。俺は何だかんだで今のクラスに落ち着いている。いや、すっかり「落ち着かれて」しまっている。
馴れあいが嫌いだと公言している俺は、クラスの連中とはあまり言葉を交わす事も無い。だが、今の状況は「孤高の存在」というポジションに居るのとは、明らかに何かが違うのだ。
「宰次様おはよー」「おはよーございます宰次様~」
「……黙れ愚民共」
「キャー来たァー!」「今日も宰次節いただきましたぁ」
キャッキャッ
「…………」
毎朝誰かしらが、へらへらと笑いながら話しかけてくるのだ。俺が凄めばすぐに散って、何事も無かったように下らない馴れあいをはじめる。
「おっす宰次様」「今日も仏頂面だなあ」「むしろ仏頂面がアイデンティティな勢いだもんな、ハハハ」
席に着けば、前に座っている馬鹿共が気安く声をかけてくる。名前は佐藤、池田、林だ。
……クソッ、なにが宰次様だ。どいつもこいつも俺をナメやがって。
俺は苦々しい表情を全面に押し出して見せる。そもそも俺はいつ許可をした?お前らが気安く話しかけてくる事も、その名を呼ぶ事も。
「おはよぉ~」
一際間延びした声が近づいてくる。こいつだ、全ての元凶はこいつなのだ。
「おーっす淳ー!」
「宰次、おはよ」
「うるさい。呼び捨てにするな」
今日も今日とて、淳はへにゃへにゃと笑いながら俺に話しかけてくる。初日に少し相手をしてしまったせいで、こいつは特に調子に乗っているように思える。
「宰次様って呼んだら呼んだで怒る癖に」
「当たり前だ、馬鹿にしやがって。大体お前がはじめに……」
「淳、お前ちょっと後ろ向いてみ」
俺の会話は池田に遮られた。ムッとする俺をよそに、淳も池田達に後ろ姿を見せ始める。
「お前また寝癖ついてんじゃん」
「今日も第四アラームまでフル稼働すか!ハハハ」
「へへへ~、今日は珍しく二回目のアラームでちゃんと起きました~!いえーい」
「全然凄くねえ~!誇らしげにしてんじゃねえよっ」
「せめて寝癖を直せる時間に起きれたら褒めてやるよ」
「ハハハ、ハハハハ!」
「……」
ああ、耳障りだ。下らない会話で俺の鼓膜を穢すな馬鹿どもめ。
「ね、宰次はいつも何時に起きてる?」
唐突に会話が俺の元に回ってくる。話を振ってくるのは決まって淳だ。当然のようにして俺を馴れあいに巻き込もうとするのだ。
「早起きそう」「謎の特訓とかしてそう」「あー、わかるそれ」
佐藤池田が頬杖をつきながら笑っている。
「……」
淳は腹の中で何かを考えるような頭があるようには思えない。したがって、話しかけてきても他意はないと判断できる。だがどうにもこいつらは、気さくな会話の体をとって俺を見下しているように思えてならない。どことなく、いけすかない。
「ハハハハ、ハハハ」
林は……まあ、コイツもアホそうだ。どうでもいいか。
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