アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
「え…、違います!先程の方が勝手に──」
確かに手を置かれかけた。
だがほんの僅かに指が当たったくらいで、"触られた"というには程遠い。
それはアルベルトが声をかけたお陰で免れたのだが、彼の様子はエリスの考えるものとは異なっていた。
「言い訳をするな。俺はこう見えて、案外欲深いんだ。例えどんなに気に入った者でも他の者の影がちらつけば途端に興味が失せ、二度とそいつには近付かない。自分のものは誰にも触れさせない主義でな」
そう言われてエリスは一つ思い当たる節があった。
それはこの宮殿に来てすぐの頃。マッシマ王が自分に触れようとした際、アルベルトが身を挺してそれを阻止した事がある。
その時の行動はこういう理由があったのかと、今の彼の言葉と繋がり妙な納得を得た。
「では…私の事はもう必要ないと?」
「どうだろうな……。今夜試すか?気分次第では首を刎ねるかもしれないが」
「望む所です。今夜、お待ち致しております」
売り言葉に買い言葉。
二人は不敵な笑みを交わし、その場で別れた。だがそれぞれが想うところは違う。
一方には絶対的な自信があった。
これは目的を果たす通過点の一つでしかない。
しかしもう一方は僅かながら恐れを感じていた。
言葉に出来ない何かが自分の中で根付き始めている。
エリスは後ろを振り返る事無く真っ直ぐ前を見据えて廊下を歩いた。
自分の運命を呪った事はない。この世には理不尽が満ち溢れている。
だがその中で大切なものを1つでも見つけた者はいつまでも強く有り続けられる。
彼の足取りはそれを立証する凛としたものだ。
「──失礼。もしやあなたがエリス様でございましょうか?」
「え?はい、そうですが…」
自分の部屋のドアがすぐそこに見える。
だが突然声をかけられたエリスは歩みを止め、男に目を向けた。
「やはりそうでしたか。あなたのお噂はかねがね耳にしております」
その男は控えめな物腰でエリスに愛想を振りまく。恐らくどこかの国の役人だろう。見知らぬ顔だった。
「はぁ…。それで、私に何か?」
「はい。アルベルト皇子の事を色々とお聞かせ願いたく、お声をかけさせて頂きました。例えば好みの物など…」
「それでしたら私よりもエドリオさんにお尋ねした方が…」
「いえいえ、それでは皇子のお耳に入ってしまう恐れが。こちらとしましては内密に贈り物をご用意したいので…」
「……」
何を言っても男はまともに取り合うことなくヒラリと交わす。
説明はできない。飽くまでこれは直感。
エリスはこの男に言いようのない不信感を覚え、一歩後ろに下がった。
────逃げなければ────
エリスのその考えを見抜いたように男はニヤリと笑う。
「おや、どうされました?」
「申し訳ございません。これからその張本人が部屋へ参りますので準備をしなくては…」
「そうでしたか。──それでは急がなくては」
「──っ!!」
男が不意にエリスから視線をずらすと背後で何かが動く。
「っ、何をなさるのですか!?」
「言ったでしょう?私共は"贈り物"をしたいと」
「っ…!?」
背後から現れた別の男に抑え付けられた直後、目の前で不気味に笑う男の指示に因り頭に強い衝撃を加えられたエリスはそのまま意識を手放した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
26 / 79