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「だが……」
「もしや彼はあなたのお気に入りですかな?ご心配は無用です。彼とは話すだけで、指一本触れたり致しませんよ」
からかうようなブルーノの声で等々出しかけたアルベルトの手を止め、エリスは優しく小声で彼に言い聞かせた。
「アル、ダメだよ。オレはあしらうのが慣れてるから平気」
「お前が平気でも俺は平気じゃない…っ」
「だったら早く済ませて迎えに来て。ここから動かないようにするから」
「……。絶対に動くなよ」
「うん、約束する」
エリスの判断が最良の選択なだけにアルベルトは渋々了承しブルーノに顔を向けた。
本来ならこんな茶番には乗らないが、自分の行いのせいでこちらが不利になる事だけは避けなければならない。
それは大国の一皇子としての役目であり、プライド。そして何よりも大きな柵でもある。
「…まだ躾の行き届いていない者です。ご無礼があるかと存じますが…」
「ええ、心得ておりますとも」
建て前の言葉を交わし、アルベルトは後ろ髪を引かれる想いで二人に背を向け歩き出した。
やるべき事をやる。それさえ終わらせてしまえばすぐにエリスを奪い返せばいい。
「────見苦しいな」
ここへエリスを連れてきたのは自分。つまり今感じている苛立ちは他ならぬ自分自身が招いた事だ。
アルベルトの呟きは誰に聞かれるでもなく賑やかな周囲の声に飲み込まれた。
「────なぜあのような事を」
ぴりぴりした雰囲気を纏い離れて行った背中を見つめ、エリスは低めの声でそう呟く。
「あの若造がいかほどの者か試してやろうと思ってなぁ」
そう言って愉快そうに喉を鳴らしたブルーノは持っていた杯を傾け酒を流し込んだ。
「──プハ…!東の酒は不味いとばかり思っていたがなかなかの物だ。これはどこから持ってきた酒だ?」
「……さぁ」
「ん~?なんだ、そんな事も知らんのか。全く、師の顔が見てみたいわ。なぁエリス?…ああ、奴は死んだのだったな」
「っ!!…申し訳ございません」
エリスはアルベルトが消えた人混みの中を見つめたまま拳を作り、奥歯を噛み締めて謝罪を述べた。
そんな彼を気にも止めずブルーノの舐めるような視線は頭から爪先までを交差する。
「しばらく見ない内に益々妖艶になったな…あれから5年か?」
「……はい。お久し振りでございます、ブルーノ様」
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