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草木も寝静まった夜更けの暗い廊下を雲間から覗く月明かりだけを頼りに歩く。
そんなアルベルトは気を競らせ、歩みも自然に速くなっていた。
「皇子…!夜分遅くまでお疲れ様です」
「ああ、お前も見張りをご苦労。エリスの容体は?」
「はい。だいぶ落ち着いたご様子で、医者も一度部屋へ戻りました。万が一急変したらまた呼べと」
「そうか…」
見張り役の護衛がドアを開けるとアルベルトは足音を潜めて部屋に入り、真っ直ぐに寝室へと向かった。
「アルベルト様!」
「騒ぐな、静かに…。エリスは?」
「…はい。熱もだいぶ下がったご様子で、先ほどから眠られております」
世話役の話を聞きながら覗き込んだエリスの呼吸は随分落ち着いたように見受けられ、アルベルトはほっと胸を撫で下ろす。
その傍らでアルベルトの様子を覗っていた世話役だったが、彼女は意を決しぎゅっと拳を作ると彼に深々頭を下げた。
「申し訳ございません…!!あの贈り物の蓋を開けたのは私なんです。でも花以外には何も見えなくて……っ、もっとよく調べるべきでした」
「……、そうだな。だが注意を怠ったのはエリス自身もだ。だから今回はお前も気に病む必要はない」
「っ、しかし……!」
「だが今回だけだ。次は首を刎ねる、覚悟しておけ。さぁ、今夜はもう自室に戻って休め。後は俺が付き添う」
「それは…っ、なりません。アルベルト様は多忙の公務でお疲れのはず…」
「構わん、俺がそうしたいと言ってるんだ。少しでも多くこいつの傍にいたい…それが二人きりだとありがたいんだが」
そう言ってアルベルトが見せた意味深な笑みは、世話役が出て行きやすいようにわざと取った行動だ。
それに気付いた彼女は申し訳なさそうに俯き、深々と頭を下げた後部屋を出て行った。
夜の静寂に包まれて。
部屋に漂う沈黙は決して不快なものではない。
二人にとっては何よりも温かく優しい時間。
アルベルトはベッドの端に腰を下ろすと汗ばんだエリスの額にそっと掌を添えた。
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