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「返事は?」
「…………っ」
「エリス」
アルベルトの優しい声は今のエリスにとって凶器以外の何物でもない。
それは何度も胸を貫き、抉り、そしてじりじりと焦がされるような痛み。
エリスは身体を強張らせ、"どうしたらいい…?"と何度も自分に問いかけた。
でも本当は、答えなんてすでに出ている────。
「…っ……ごめ……なさい…っ」
「っ…!嫌だ…と言うことか…?」
「……違う。あなたに言ったんじゃない…」
「…?だったら誰に────っ」
ナイフを離したエリスの手はアルベルトの背中に回り、彼は初めて自分からキスをした。
求めることを拒み続けたエリスは、いつもアルベルトから与えられるものを受けるだけで決して自分からは行動しない。
そんな彼がとった行動にはよほどの勇気が必要だったのだろう。
縋る腕、重なる唇、絡む舌、アルベルトを包み込む身体、その全てが臆病に震えていた。
「ッ、エリ……。どうして震えているんだ?」
「なんだか……恐い。どうしてだろう…」
「恐い…か。何となく分かる…。お前を近くに感じるたび、俺もそんな気分になるんだ。だがそれ以上に心が満たされる…。エリス。身も心も俺に生涯の忠誠を誓え。共に生きると…約束しろ」
「っ!────誓う。誓うよ。オレの全てはあなたのものだ。アル…っ…愛してる」
「やっと言ったな?俺をどれだけ待たせたと思っている?」
二人は穏やかに笑い合い、今度はそっと唇を重ねた。
神も何もない二人だけの空間で静かに誓いを立て、身を焦がす。
まだ見ぬ先にある平穏を願い、先程まで殺意の象徴を手にしていたエリスの手を、アルベルトは指で包み込むように絡ませていった。
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