アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
台風の日に-1
-
ーーカサッ。
ん?
ベッドの上で大の字になってポテチを頬張っていたら視界の端を何かが横切った。
音がした方向に視線を向けたけど、そこに広がるのはいつもと同じ部屋の光景だけ。
気のせいか~。
再びポテチの袋に手を伸ばして、ポリポリやり始める。
あー、極楽極楽。
珍しく晩里が用事で出掛けたと思ったら、台風で電車が止まって帰れなくなったと電話が掛かってきた。
晩里に会えないのは寂しいけど、おかげで心置きなくベッドでお菓子を堪能できるんだー。
ちょっとぐらい溢しても文句言う人はいないし~。明日電車が動いて晩里が帰ってくる前にこっそりシーツを替えればオールOK!
普段禁止されてるちょっとだけ悪いことを内緒でやるって何て楽しいんだろう。
シーツの上には、さっきまで食べてたコンビニコロッケの衣と、パウチをを開ける時にうっかり跳ねたソースのシミで薄茶色のエリアができている。
これもいつもだったら慌てて証拠隠滅を図るけど、今日に限っては半日も猶予がある!
やっぱ台風の日はコロッケに限るよね。
ーーカサッ。
ホクホクコロッケの余韻に浸りながらポテチの空き袋を片付けようとしたところ、さっきと同じ方向から音が聞こえてビクッとする。
……これは現実だ。
認めたくはないけど、一匹見かけたらら千匹は居るっていうあいつだ。
うわ~、ヤバいな~。
虫嫌いの晩里のことだから、俺の部屋であいつが発生したって知ったら問答無用でちんちんもがれそう。
よし!
晩里が帰ってくる前に退治して、何もなかったことにしよう。出来れば触りたくないから、窓を開けて出ていって貰おう。
そう決まったら善は急げだ。
空になったポテチの袋を手に、音が聞こえた方へと忍び寄る。
ーーカサッ。
「おわぁぁぁっ!!」
羽根を広げた黒い塊が向かって来るのを間一髪で避けたものの、手に持っていたポテチの袋からベッドの上に残りかすがぶちまけられた。
「あ~、晩里がいない日で良かった」
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、着信音が鳴って反射的に出てしまったのが晩里からのテレビ電話。
のんびりの極みだった休日が突如として慌ただしくなるから着いていけない。
「今、何をしていますか?」
「え? え? えーっと、漫画読んでた」
「へ~え」
あー、何でこんなに動揺してるの俺。こんなんじゃ、何か後ろめたい事があるってバレバレじゃん。
「ちょっとベッドの上を映して貰えませんか?」
「え? え? 何でベッド? 何もないよ」
「決まっているでしょう。寮長としての務めである、部屋の点検ですよ」
「……」
「見せられないんですか?」
うわー、どうしよう。どうしよう。どうしよう。
靴下で、ポテチとコロッケのカスをあっち行けあっち行けと追いやるけど、ベッドの下に落ちるどあころかシーツの上に塗り広げてしまっている。
しかもベッドのど真ん中ではソースのシミがこれでもかとばかりに自己主張してるし。
「何をモタモタしているのですか?」
ひっ。
台風で足止めされた事もあってか怒気の滲む晩里の声に、血の気がザザーッと退く。
「早く見せないと、帰ったら今までに経験したことのないような罰則を与えますよ」
嫌だ、それだけは絶対嫌だ。
「こ、これでいい?」
ベッドの下半分を避けて、汚れのついていない上半分を映す。
「下もあるでしょう?」
「下?」
「とぼけるんじゃありません。いつから貴方のベッドは上半分だけになったのですか?」
「下、ああ下ね」
そーっと枕を退けて、さっきまで映していた上半分をあたかも下半分であるかのように映してみせる。
「下だよ」
「では、もう少し離れて全体を映してください」
「ぜ、全体?!」
「そんなに罰則がお好きですか?」
こうなりゃ一か八かだ。
退けていた枕でソースのシミエリアを隠蔽して、ここまで離れたら大丈夫だろうと、部屋の端からベッドを映してみせる。
「どう?」
「何でそんなところに枕があるのですか?」
「え? べ、別に」
「何か怪しいですね、枕を退けてください」
「え?」
「罰則」
離れているのに、晩里がすぐ側にいるような囁きに足が勝手にフラフラと進んで枕を退けた。
「望夢ーーーーーーっ!!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
103 / 111