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気づかない事
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今日で半年、長いようで短かった。アイツとの恋人生活。
同級生だったけど、学生時代は1度も喋らなかった。
ついこの間の夏の同窓会で会って、付き合い始めた。
時が流れるのは早い。今は冬。この半年いろいろあった。
お互いにゲイだと知った時は驚いたけど、嬉しかった。
体も、心も割とすぐに繋がった。
そばにいて楽しかったし、ドキドキした。
たまに手を繋いだりしては手の平が熱くなって手汗でぐっしょり。
どれだけ緊張してるんだよって言って笑われた。
恋人になる条件は、半年間だけという期限付き。
結局なぜ半年なのかは教えてくれなかった。
今は水族館の中、楽しく散歩中。
中は薄暗いし人目を大いに気にしなくていい。
最後の日だと知っているから、足取りは重くなる。
ここを出たらきっと、アイツから別れが切り出される。
それを聞くのが怖い。
付き合い始めはそんなこと考えもしなかった。
軽く、また恋人ぐらい探せばいいやって。
でも、違う、何か違うんだ。
アイツは優しいのもあるけど、優しさだけじゃなくて。
本当の愛を目一杯、俺に注いでくれているような。
そんな気がして、離れ難い。
考えながら歩いていると出口に着いてしまった。
アイツは「じゃあね」なんて言って俺に口付けをする。
最後にそんなことまでしちゃうのかよ。この野郎。
俺は頷いて、見送ることしか出来なかった。
2週間後、アイツから手紙が届いた。
内容は、ご飯を食べてるか、歯を磨いているか。
ちゃんと寝る時に布団を被っているか。
そして、半年前の同窓会のあの日、余命宣告を受けていたこと。
それが半年であったこと。
この手紙は、アイツが息絶えたあと、看護師に頼んで投函してもらう。
というものだった。
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