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カナコ
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ユキがいつの間にかいなかった。
心当たりがあり過ぎて、心の中でため息が出た。
昨日、僕がしたことでユキはどこかに隠れてしまったのではないか。
……いや、きっとそうだ。
僕がただユキのことを考えていると、いつの間にか僕の目の前に女の子がいた。
名前は……カナコちゃん?だったか。
ユキと同じ一年生だろう。
女の子なのに、僕に話しかけてこなかった唯一の一年生だから、顔は覚えている。
メガネをかけていつも本を読んでいる。
実は結構美人で、同期の何人かはカナコちゃんにアプローチしてことごとく、ふられた。
「荒木さん」
「ん?なに?」
カナコちゃんは、周りを少し気にしながら言った。
「少し、お話があります」
そう言って、カナコちゃんは、皮肉にも昨日僕とユキが唇を交わした例のバルコニーへ行った。
黙って歩き出したから、着いていくのか迷ったけど、着いていくことにした。
多分、性格なのだろう。
スタスタと歩く姿はそこら辺の女子と違った。
こういう子は、大学生になるとかなりモテる。
ただ、高校生までは苦労しただろう。
お高くとまってる、と勘違いされたり、
バカにしている、と勘違いされたり……
いい天気だからかバルコニーは最高に気分がいい場所になっていた。
みんなはリビングの方で盛り上がってるからか、バルコニーには誰もいなかった。
「まさか上手く二人になれると思ってませんでした」
「女の子たちも今は他の奴と喋ってるから」
「荒木さんは、まるでホストですね」
なんだろう……
カナコちゃんの言い方に棘を感じる。
「荒木さんの周りいつも女子ばっかで、話しかけるの結構大変なんですよ。何とかして下さい。別に、嬉しいわけじゃないんでしょ?」
うん、わかった。
「カナコちゃんは、僕が嫌いだね?」
半笑いで言うと、カナコちゃんは大きく目を見開いた。
そして、少し俯いて何かを考えて、思い付いたように顔を上げた。
「そうですね。多分、そうかもしれないです」
荒木岳。
人生で初めて女の子に「嫌いだ」と言われました。
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