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夏の章三 夏ぐれ
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「気が済んだか?」
遊命は膝を立て、可児に打ち捨てられたままの格好で言った。
「……」
「こんな強姦だか、凌辱だか、どっちでもいいや。そんなことしなくても…」
「どうだか…」
可児が遊命を遮って、言葉を繋いだ。
「本気で嫌だったら、おまえの顎割って逃げてるよ」
誇張ではない。遊命にはそれが出来る。
可児は項垂れて、首を左右に振った。
「まぁ、聖人なんちゃらみたく全てを受け入れて、整然とふるまわれるよりは、人として分かるけどね」
「何?」
「みんな引き摺り込んでやれって思う方が、人として分かる」
「……」
可児の表情が険しくなった。
少なくとも留まる気持ちはあった。
保健施設で別れていたら?
目の前に遊命がいなかったら?
己れの行為を肯定する言葉を探しては打ち消した。
「何で俺だけがって、一人輪っかの外に追いやられて、怖くなったんだろ?」
「……分からへん。何や、言葉にすると陳腐やな。……陳腐やけど、そういう一人は怖い。遊命だってそうなったら怖いやろ?」
「輪っかの外にいるのは慣れてるよ。生まれてこのかた、白くて茶色いからな。爪弾きにされても、その原因である親には言えないし。時として残酷だよな、遺伝子って」
遺伝子──可児の脳裏に、父親の顔が浮かんだ。
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