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夏の章三 夏ぐれ
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彼が父親でなかったら、今の状況も、中三の時、ひた隠しにしていた性対象を藤沢によって暴かれることもなかっただろうか?
母親は、「性愛の好みは遺伝しない」と、言っていたが、ゲイである父親のせいにして真正面から己れを見据えていなかったのも事実だ。
「こんな話、可児とじゃ次元が違いすぎるか……」
遊命は、汗で額にへばりついた髪を横へ流した。
それだけの仕草でも、身体はビリビリと電気が走ったように痛んだ。
身体の痛みはいつか消える。でも、可児の苦しみは、どんなにぶちまけても消えない。
今、目の前にある横顔も、その奥に泥のような苦しみを沈めている。
「なぁ、一人が怖いなら、一緒に死んでやるよ」
──だって、そのつもりだっただろ?
「…何なん、そのセリフ。また、考えなしに」
「考えてるよ」
──俺は、そのつもりだったよ。
「ハ……、考えてへんのは俺か」
可児は自嘲を込めて言った。
どんなに周りの人を傷つけても、怒りの波を浴びせても、自らの現状が変わることなどありはしないと、分かっていたのに。
二人の間に沈黙が流れ、つけっぱなしにしていたエアコンの音が響く。
再び、何処からか音楽が流れ込んできた。
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