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夏の章三 夏ぐれ
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少し虚ろげだが、真っ直ぐな瞳が可児を捉えている。
「引っ込みがつかなくなる前に止めとこ」
「せやけど、遊命かて……」
「俺のことはいいよ。可児は陰性だった。その事実だけを受け入れよう」
「……」
「本当に申し訳ありませんでした」
長谷川は、テーブルに額を擦り付けるようにして謝った。
「長谷川さん、親の立場からすると、裁判に持ち込んでもいいのですが…」
「……はい、分かってます」
長谷川は、日出子の持ちかけた話を静かに受け入れた。
「あ、いえ、告訴するつもりはありません。その代わり、事の顛末を詳しく教えていただきたいんです」
「……詳しくと言われても…、本当に分からないんです」
「可児と何かあったんですか?」
「何も……ありません」
長谷川は、また口数が減っていった。彼自身、頭の中のどこを探しても、その答えが見つからないのだろう。
「上手くいってた?」
「……」
長谷川は、ばつの悪そうな表情をした。日出子はそんな長谷川を察して、軽く微笑んだ。
「うちのことやったら、気にせんでえぇよ」
「……いってたと思います」
「漠然と不安に囚われてしまった?」
「不安…に、ですか?」
長谷川は、日出子の言葉を繰り返したかと思うと、口をつぐんでしまった。
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