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夏の章三 夏ぐれ
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可児は遊命の前に立ち、表情を見られないように壁を作った。
「眠いんか? しゃーないなぁ」
「え? わっ!」
可児は遊命の脇の下に潜り込むと、遊命の腰を抱え、担ぐようにして持ち上げた。
ふわりと遊命の身体が宙に浮く。
遊命は咄嗟に可児の服にしがみつき、不安定な体勢を整えた。
「もうえぇやろ? 遊命も眠いようやし。上行くで」
「……あ」
長谷川が何か言いたそうな顔をしたが、可児は無視して足早に部屋を出た。
「いいのか?」
部屋を出ると、担がれた遊命が背中から尋ねてきた。
「もうどうでもえぇわ」
可児は遊命を抱えたまま、階段を登り始めた。
一段登る度に遊命へと振動が伝わる。可児の怒りは、まだ収まっていないようだった。
「話、変な方向行ってびっくりしたな」
「ホンマに呆れるで」
「でも可児のルーツが垣間見れて、ちょっと意外だったけどね」
「あんなんルーツとちゃうわ」
可児は、あえてぶっきらぼうに話していた。遊命にも分かるほど……。
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