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イースターエッグ事件を持ち出されて初めて懐かしい園の光景が鮮明に蘇った。
倫祢より2つ下の学年でよく遊んでいた幼馴染みだ。
「倫祢さん全く変わらないですね。あの、玄関先では何ですので」
赤い卵はいやだと注文を付ける謎の客から懐かしい幼馴染みに昇格した敬典の部屋に上がり込み、お茶を振る舞われる。
同じカトリックの幼稚園に通っていた2人は倫祢の方が2つ上だったが毎日毎日一緒に遊ぶ仲で、日曜日のミサにも時々一緒に参加していた。
学校は敬典がそのままカトリックの小学校に進んだのに対し、倫祢は公立の学校に進んで別々になったものの、そろばん教室にはしばらく一緒に通っていた。
「いつからだっけな、会ってないの」
「倫祢さんがそろばん辞めてからですよ」
「ああそうか、そしたら3年ぐらいの時だな。もう10年以上になるのか」
敬典にベッタリだった倫祢も小学校で友達が出来ると敬典とはだんだん疎遠になっていき、そろばん教室も3年生になってクラブ活動が始まったのをきっかけに辞めてしまったのだ。
「それよりさー、何だよ白い卵じゃなきゃいやだって。まさかお前、俺があそこのチーフだと知ってて困らせてやろうって目論見じゃないだろうな?」
「違いますよ。相変わらずですね、倫祢さんは」
敬典は微笑って立ち上がると、サイドテーブルの上から麦わらのバスケットを持ってきた。
バスケットの中にはリングピローのような光沢のあるブルーのクッションが置かれていて、その真ん中にカラフルな装飾を施された丸い球体が乗っかっている。
「お前が作ったの?」
「はい、去年のイースターエッグコンテストに出した作品なんです。今年もコンテストがもうすぐなので、それで白い卵が欲しかったんです」
「そういうことか。絵描くなら白いほうがいいもんな」
小さな頃から絵を描いたり細かい作業が好きだったところは今でも変わっていない。
「まだ教会通ってんの?」
「はい。将来は教会で働くことが出来たらってぼんやりと考えてます」
敬典は倫祢が全く変わってないというけど敬典の方がもっと変わっていない。
「へー、神父さんとか?」
「はい、一番の目標は」
「神父さんになったら、俺が金持ちになれるように祈祷してよ」
「本当相変わらずですね、倫祢さんは」
久々に再会した幼馴染みと話をするのはとにかく楽しくて、あんなに自分を蝕んでいた疲れもどっかに行ってしまった。
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