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敬典が教会に来なくなった。
日曜のミサは毎週用事やバイトで遅くなるという理由でその都度「倫祢さん先に行ってください」とメールが来るが、結局姿を現さない。
キス騒動の翌朝もお互い何もなかったかのように振る舞ったし、教会以外では普段どおりに会って食事をしたりするので嫌われたわけでもない筈だ。
偶然だとは思うがどうしても気になる。
敬典と知り合ってから日曜日の終業後に通い続けていたミサも式の流れを覚えてしまうまでになっていた。
だから一人でも困らないのだが、敬典が居ないとつまらない。
ついに敬典が教会に顔を出さないままイースターエッグコンテストの当日になってしまった。
教会のロビーに整列した長机の上には、各自が趣向を凝らしたイースターエッグが所狭しと並べられている。
来訪者は入り口で鉛筆と投票用紙を受けとる。
そして自分がいちばん気に入った作品の番号を記入して、投票箱に1票を投じるシステムになっている。
審査に公平性を期するため出展者の名前などは公開されていない。
倫祢も他の客たちに混じって投票用紙を手にエッグを見て回った。
名前は書かれていないが、敬典が今回出展する作品の原画は目に焼き付いているので見分けられる自信はある。
ざっと一周してみた段階では敬典の作品が見つからなかったので、今度はじっくりひとつひとつ時間を掛けて見て回る。
(絵柄を変えたのか?)
倫祢の記憶にあるデザインのエッグは何度回っても見あたらなかった。
(まあいいや、何番の卵か聞いてみよ)
こういう事は直接本人に聞いてみるに限る。
建物を出ると自販機が並んでいてちょっとした休憩所になっている。
メモを取るのにいい台はないかと見渡すと、公衆電話を乗せるのに使われていた台があった。
投票用紙と鉛筆をそこに置くと、スマホを取り出して敬典に電話を掛けたが「お掛けになった電話は――」とアナウンスが流れたので電話を切った。
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