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【終章】8
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大佐が次に放った一撃。
そう、これこそがついに決定打となったのだ――。
*****
はじめの一発を当てた時からすでに気づいていたが、やはりペレのボールは一筋縄ではいかなかった。
ただ単に台に乗っているだけならまだしも、箱は抜け目のない射的屋の主人によってしっかりとビスで固定されていたのだ。しかも四ヶ所も。
「(この悪徳商人め!)」
大佐は心の中で悪態をついたが、それでもあきらめようとは思わなかった。
それどころか何としてもこいつに一泡吹かせてやりたいと、俄然気持ちを強くした。
そして王子の願いを叶えるべく、ひたすら励んだ。
根気強く、根気強く......。
中心の的ではなく、箱の右下にあるビスだけに狙いを定めて小さな衝撃をこれでもかと送り込む。
そして831発目。ついに右下のビスがピンッと音を立てて飛び去ったのだ。
するとこれまでびくともしなかった箱の一部が、わずかだがフワリと宙に浮き上がる。
まさに雨垂れが大岩を穿った瞬間だった――。
*****
「......すごいっ!」
それを見た僕は両手でガッツポーズを作った。
あなたの今の一撃に、何だか自分の身体までもが痺れた気がした。
ボールが取れたわけじゃないけど。
だけど、それと同じくらい嬉しかったんだ。
あなたの後ろ姿が涙で霞んで見えなくなった。
「(ソウゲツ......僕、ヘンかな?)」
いまさら気づいたんだけど、本当は僕、ペレのボールなんてそんなに欲しくないのかもしれない。
ちょっと前まであんなに夢中になっていた。
きっともうすぐ手が届く。
だけどもう......。
こんなことを言ったらあなたは怒る?
そんなのいいから早く戻って来て。僕のことを抱きしめて――。
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