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「まったく、虎鉄はともかくあんたはもう子供じゃないんだから、こんなに服を泥だらけにしないでくれる?」
「す、すんません…。」
「一体いくつになるまで泥遊びする気なの。」
「し、しておりません…。」
逃げるように走りながら帰る虎鉄を追い、遥歩達は家に戻ってきた。
奈緒子は泥だらけになった2人の姿を見て、玄関から先へは入るなと言うと、すぐさま洗面所からタオルを持って来る。
「ほら、取り敢えずこれで少しは拭き取りなさい。」
「は、はい…。」
「虎鉄は、私がやってあげるわね。」
「…。」
遥歩に対する態度とは違い、にこやかにそう言うと奈緒子はもう1枚のタオルで、風呂上がりの時にするように虎鉄の髪を拭いた。
虎鉄は、されるがまま大人しくしている。
…人間の姿のままで…。
「…。」
…さっきのあの顔…何だったんだろ。
…恥じらい…?照れ隠し…?
…照れ隠しであんな本気で噛まれたらたまんないよ…。
…おかげで、今日だけで2箇所も怪我をした。
……まだ首が痛い…。
そんな事を考えながら、横に立つ虎鉄の顔をちらちらと見る。
すると、バチッと視線が合ってしまった。
「…何見てんだよ。」
「えっ、い、いや…。」
低い声で挑発的にそう言われた遥歩は、思わず尻すぼみしてしまう。
…チ、チンピラかよ!!
…やっぱ怖ぇよこいつ!
…とほほ…俺の知っているあの可愛い虎鉄は何処に…。
「はい、これでよし…そうだわ。2人とも、ついでにこのままお風呂に入っちゃいなさい。」
「…えっ?」
虎鉄の髪を拭き終えた奈緒子は、遥歩のタオルも回収すると思い付いたようにそう言った。
遥歩はその言葉に思わず目を点にする。
「今日はいつもより涼しいし、お風呂沸かしておいたから。」
「い、いやでも…!」
…母さん本気か!?
…だって今、虎鉄は人間の姿になってるんだぞ…!?
…つか、このあり得ない状況を消化するの早過ぎだろ母さん!
…俺だって、まだいろいろと信じられない事がいっぱいあるし…こ、心の準備とか…!
内心焦りに焦りながら、遥歩は自分の意思を伝えるべく、奈緒子に向かって必死にアイコンタクトをした。
それを何となく察したのか、奈緒子は少し溜息を吐く。
「何よ。男同士、裸でお風呂に入るくらいなんて事ないでしょ?中学生じゃないんだから。」
そうじゃねぇよ!!
あまりの奈緒子の天然っぷりに、流石の遥歩も怒鳴りたくなった。
対する奈緒子は、タオルを早々に洗濯しようと、また洗面所へ戻る。
残された遥歩と虎鉄は、沈黙の中暫く玄関に立ち止まっていた。
「…と、取り敢えず、部屋に入ろうか。」
顔を引き攣らせながら、微妙な笑みを浮かべて遥歩はそう言った。
靴を脱ぎ、廊下に足を踏み入れようとしたのと同時に、ずっと黙っていた虎鉄が口を開く。
「…風呂は、嫌いだ。」
「え…?」
そう小さく呟いた虎鉄の方を振り返る。
虎鉄は、顔を俯かせたまま、動こうとしなかった。
よく見ると、虎鉄は靴を履いておらず、足はまだ汚れていた。
…さすがに、靴は履かないよな。
「……。」
そんな虎鉄の様子を見た遥歩は、またしても…子供のようだと思った。
…そうだ、虎鉄は昔から風呂が大の苦手なんだった。
…今は人間の姿だけど…やっぱり、そういう所は変わらないもんなんだな…。
…。
「…虎鉄。俺は久々に帰って来た事だし、虎鉄と一緒に風呂に入りたいなぁ。」
「…っ。」
…あ、あれ…何言ってんだ俺…。
自分でも予想外の言葉を発してしまい、遥歩は戸惑った。
対する虎鉄も、少し驚いた顔をする。
「…な?一緒に入ろ。綺麗にしてやっから。」
…まぁ、良いか…言っちまったもんは仕方ない。
そう割り切り、遥歩は微笑を浮かべた。
そんな遥歩の…ほんの少しの優しさを感じ取った虎鉄は、ずっと寄せていた眉間の皺をなくす。
「……遥歩…。」
遥歩の笑顔を見たからか…虎鉄は、今はない尻尾を振るような気持ちになった。
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