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ようやく大人しくなった虎鉄と風呂場に入ると、遥歩の頭にふといろんな疑問が湧いてきた。
…そういや、シャンプーとかリンスとかってしていいのかな。
…犬用のやつ?いやでも今こいつ人間だし…。
…ていうか虎鉄の奴…洗い方とか絶対知らないよな。
「……。」
……あれ?ちょっと待て…。
…まさかこれって…。
……俺が洗ってやる的なカンジですか…!?!?
「…なんだよ。お前が入れって言うから入ったのに、ぼーっと突っ立ってんじゃねぇよ。」
「…あぁ、うん…。」
……いやいやいや待て待て!!
…冷静に考えたらおかいしよ!?おかしいよどうしよう!
遥歩はちらりと、裸の自分と虎鉄の姿をうつす鏡を見た。
…何これ!?どんな状況!?
…やばい…一緒に入るだけならまだしも、その先の事まで考えてなかった…!
…そうだよ…虎鉄が自分の身体とか髪とかその他諸々を洗えるわけねぇじゃんかどんな器用なわんちゃんだ!
「と、取り敢えず…俺が先に洗うから、虎鉄は湯船に浸かってろよ。」
「ゆ、ぶね…?」
浴槽の蓋を開けながらそう言った遥歩の言葉に、虎鉄は眉間に皺を寄せた。
「…あー、湯船ってのはこれ。お湯が入ってるやつ。」
遥歩はそう言って蓋をどかしながら、湯気が立つ浴槽を指差した。
すると、虎鉄はさらに眉を顰めると、小さく口を開いた。
「…いやだ。シャワーだけでいい。」
「え?でも、せっかく沸いてんだし…。」
「いいからさっさとしろよ!狭ぇんだから!」
そう張り上げた虎鉄の声は、狭い風呂場に響き渡る。
よっぽど湯船に浸かるのが嫌らしい。
「…わがままばっか言ってると、高級ドッグフード食わせてやらないぞ?」
「うっせぇ、死ね。」
「さっきから口の悪さが俺の予想の斜め上を行き過ぎてるんだけど!?」
あまりの往生際の悪さに、遥歩の中でフツフツと苛立ちが湧き上がって来た。
「…あーぁ、そうかそうか。こーんなに気持ちいい湯船に虎鉄は入らないのか。あーもったいないなぁ!入ったら身体はポカポカになるし、スッキリするし、すっげぇ気分良くなるのになぁ!」
「…。」
我ながら大袈裟だと思いながらも、遥歩はわざとらしくそう言った。
そして、桶にお湯を汲むと、自分の身体にかけてそのまま湯船に浸かり始めた。
その光景を、虎鉄はただ見つめる。
「あー気持ちいー!こりゃ疲れ吹っ飛ぶわー。」
「…っ。」
…見てる見てる…あれは確実に興味を示してる顔だ。
……ていうか、虎鉄を風呂に入れるだけで、なんでこんなヤケになってんだろ俺…。
…虎鉄が犬だった時と…やっぱなんか違う…。
……つかまじで気持ちいい…この季節はずっとシャワーだっから、湯船に浸かるの久々だなぁ…。
ふぅ、と息を吐きながら本当に気持ち良さそうにしている遥歩を見て、虎鉄は口をへの字に曲げた。
暫く何かと葛藤をしているような顔をしたまま動かなかった虎鉄…
…だったが…
「…うわっ!?え!?」
ざぶんっと、いきなりお湯が波打ち、遥歩の目の前に大きな背中が現れた。
開いていた遥歩の足の間に、なんと虎鉄が入り込んできたのだ。
思わず遥歩も唖然とする。
「こ、虎鉄…?」
…ほ、ほんとに入って来た…!
…つか狭っ!!お湯なくなる!
ぎゅうぎゅうになった浴槽から、じゃばじゃばと湯が流れ出ていった。
さすがに、同じくらいの体格の男性が2人入れる広さではないようだ。
「……。」
黙ったまま、遥歩に背を向ける虎鉄の姿をじっと見た。
少し猫背になっていて、気のせいか…耳と首の後ろが赤く染まっているように見える。
…背中…ごつごつしてる…。
…明らかに俺より筋肉ついてる…よな…。
……犬より筋肉ない俺って、一体…。
そんな事を考え、少し虚しい気持ちになる。
「…虎鉄、気持ちいい?」
後ろから顔を覗き込むように、遥歩は虎鉄の肩に顔を近づけた。
すると虎鉄は、ふいっと顔を逸らす。
「……なんか…変な感じだ。」
「え?」
虎鉄がぽつりと呟いた言葉に、遥歩は首を傾げた。
「…毛がないから、鬱陶しくないし……いつもより…気持ちいい…。」
「………。」
………あれ…今なんか…ムラッとしなかったか?俺…。
……。
……んん?!いやいやムラッてなんだ、ムラッて!!
「そ、そっか!毛の鬱陶しさは、風呂が嫌いな原因の一つなのかもな!な、なるほどなるほど!」
…お、おおぉおお落ち着け俺!!何考えてんだ!
…さっきの顔といい…何ちょっとどきどきしてんだよ!!
………あれ…よく考えたら、何この体勢…!
…俺の足の間に…虎鉄が……座ってる…。
…裸で…男で…人間の……人間の……虎鉄が……
何やらぐるぐると考えていた遥歩は、思わずその場に勢いよく立ち上がった。
それにより、湯が激しく波打つ。
突然の事に驚いた虎鉄は、身体がビクッと跳ね上がり、後ろを振り返った。
「さ、さぁて!俺はそろそろ身体を洗うとしようかなぁ!こ、虎鉄君はそのまま浸かってて良いからな!?ゆ、ゆっくりしてろ!」
「…。」
明らかに様子がおかしい遥歩を、虎鉄は怪訝そうに見上げる。
そして湯船から忙しなく出ようとする遥歩の腕を…何と虎鉄が掴んで来た。
「ちょっ、え…?!」
あまりの事に、思わず遥歩は目を見開く。
虎鉄は、下を俯きながら何か小さく呟いた。
「……ま…まだ…出んなよ…。」
「えっ…。」
…出んな…って……。
…何…それ…。
「…気持ち、いいんだろ…?」
「…………。」
…あ…何か俺………すっげぇ…おかしい……。
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