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なんて思っていた僕が甘かった。
昨日の今日だし、一限からじゃなくても、きっと途中から授業にくるだろうと思っていた。
…が、二限目も、三限目も、四限目も、結局ミチル君も恭哉君も姿を現さない。
それなのに何故か昨日みたいに視線は突き刺さるし、もう良いこと無しだった。
「みんな何やってるんですかっ!」
昼休みになって、第二音楽室に駆け込む。
勢いよく開けた扉から見えたのは、呑気にミチル君のお弁当を広げて、美味しそうに食事をしているみんなの姿だった。
「おー悠里。今日なんか元気良いな」
「元気が良いとかじゃなくて!なんでみんな授業に出てないんですか!」
「え~?だって、別に昨日のは授業にちゃんと出るっていう約束では無いでしょ?」
「そうですけど…。でも、三十番以内に入るっていうの、忘れてないですか?!」
「覚えてるっつーの。晩飯かけるつっただろ」
「そうですよ!…夜ご飯奢るから負けで良いとかダメですよ?!」
まさかそんな、最初から賭けに負ける気でこの勝負を持ちかけたの…?!
なんて考えが頭を過ぎったけど、次の那智君の言葉でそれは消え去った。
「てゆーかさ、俺ら前のテストでも全員三十番以内だったし」
「………え?」
「一番頭良いのは那智で~、次が恭哉。んで紫乃ちゃんが来て、その次が俺と藤ってとこかねぇ」
「いや、え、あの」
そんなのありですか?!ってことは、元々勝つ自信しかなかったからこの勝負に乗ったのでは…?!
「ぼっ、僕のこと騙したんですか…?!」
「いやいやいや、俺ら何も言ってないから。悠里が勝手に言い出したやつだから」
那智君の言うとおりである。まさか、みんな普段馬鹿ばっかしてるからそんなに頭が良いとは思わなくて…。
「ちなみに悠里はどのくらいなわけ?」
「僕は、一応こっちに来てからは初めてのテストだから…」
なんてごまかしてみたけど、実際は大ピンチである。
僕が前まで通っていた学校とここの学校の偏差値は殆ど変わらない。人数も大差ないから、ここでテストを受けたとしても、前の学校の時の順位くらいになるだろうことが予測できた。
いや、それはマズイって…。目標は少し高めの方が良いかと思って、三十位にしたのに。
ちなみに、僕の前の学校のパーソナルベストは四十七位である。これは詰んでる…。
「へぇ?変な汗かいてるけど大丈夫~?」
動揺が身体に出てしまったらしい。言い出しっぺの僕が一番成績が悪いなんて、絶対これからみんなに授業出るように説得できないじゃん…!
「悠里勉強苦手なの?」
「い、いや、苦手では無いけど…好きでも無いっていうか…」
「特別に俺らで教えてやってもいいけど?」
ニヤニヤしながら、超絶上から目線で問うてくる那智君。
自分で出来るって言いたいところだけど、正直こんなに強力な助っ人はいないと思う。
よし…!それじゃあ、高校生らしく、みんなでテスト前の勉強大会をしよう!
これはなんか、凄く真面目っぽいぞ!
「現文と古典は那智担当だよね。数学と化学は俺に任せて!」
どうやら紫乃君は典型的な理系らしい。那智君は文系なのかな?
「歴史はミチルが一番覚えやすいから、世界史と日本史担当で」
「地学と生物は藤よね~」
「…恭哉君は?」
一人で二教科ずつ受け持ってくれるらしいけど、それだと負担が大きい部分もあるんじゃないのかな?
みんなの中では二番目に頭が良いみたいだし、恭哉君にどれか回したら少し楽になるんじゃ…と思って言ってみたのだけど。
「いや、恭哉はちょっと…」
「あれは教えるのには向いてなさ過ぎる」
「…簡潔に説明してるつもりなんだけどな」
「簡潔すぎだしお前のはもはや説明って言えないから」
…なるほど。多分恭哉君は、たまに本当に頭のいい人の中にいる、何が分からないか分からない、って言う人の人種何だと思う。
「コイツほんとひどいぞ。教科書の重要な部分指差して『ここ覚えたら解ける』で終わりだからな」
「……え?」
「あれは説明っていうより、覚えろって言う命令に等しい」
「要点教えてくれてるってことにはなるんだろうけど、理解の仕方の説明とか皆無だからね~。恭哉は大体一回読んだら分かっちゃうんだよ」
ええ、そんな人本当にいるんだ…。恭哉君のスペックの高さには、ひたすら驚かされるばかりだ。
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