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6章(5)
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ぼくは望みを手にするために自らあそこにとどまり、あのすべてに耐えた。
それが幻だったというのなら、信じられるものはもう何もない。
ぼくは監禁され、暴行されたあげく、仕返しに一頭の死んだ山羊を盗んだ。
それが現実だというのなら……!
でも、現実は必ずしも真実ではない。
人が現実と呼ぶのはただ、真実という多面体のほんの一部分にすぎないのだから。
リノルは家に向かう列車の中で、日記帳のページを一枚破りとって書きつけた。
親愛なるフレディ、
この手紙が投函されることはないだろう。
きみが今どこにいるのか、ぼくは知らない。
きみはきっと、ぼくをずいぶん身勝手な男だと思っていることだろう。
黙って出てくるなんて、きみに悪いことをしてしまった。
許してくれなどと言う資格はもうないかもしれない。
でも、これだけは言わせてほしい。
ぼくにはわからなかった。
今もわからない。
どうしたらきみに迷惑をかけずにいられるのかわからない。
どうしたら幻にすぎないかもしれないものを追い求めずにいられるのかわからない。
どうしたら地に足をつけて、まともな人間らしくきみを愛せるのかわからない。わからない。わからない……!
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