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9章(2)
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リノルは火箸をつかんで暖炉の前に屈み、微かになっていた火を掻き立てて薪を足した。
ソファの前のローテーブルにワインとワイングラス、ハム、薄切りのパンなどを並べて待った。
しばらくしてフレディがシャワーから出て、部屋着を着て戻ってくると、二人は並んでソファに腰かけ、軽く飲んだ。
フレディの口から出たのは、信じがたい話だった。
島には確かに農場があったが、それはほとんど廃墟のようなもので、住人は誰もいなかった。
建物はもう何十年も使われていない様子だった。
しばらく探索してみたものの、リノルが言ったような馬も、人が生活していた痕跡さえ、どこにも見当たらなかったというのである。
ならばリノルが見たのとは別の島だったとも思える。
しかし、島の内部の様子以外は、場所も町の名前もすべてが一致していた。
どこをどう照らし合わせても、リノルとフレディが上陸したのは同じ島だとしか考えられないのである。
リノルはひどく驚いた。
「きみ、ぼくがおかしくなったと思っているんだろうね……」
「いや。おまえの言ったことは信じる」フレディは言った。
「港町では確かに噂を聞かされた。あの島には怪物が住んでいる、近づくな、と言われた。おまえのことも語り草になってたよ。止めるのもきかずに島へ行って、頭がおかしくなって戻ってきた男がいるってな」
「それに、俺があそこへ行ったのは、おまえの話が本当かどうか確かめるためじゃない。お前の言ってた男に会うためだ」
何のことかわかって、リノルの顔から血の気が引いた。
「なぜ君があいつに会わなきゃならない?」
「やつを殺すためさ」
フレディはリノルの目を見つめ返して、はっきりと言った。
「いや、ぶちのめす程度で許したかもしれないが。でもやつはいなかった。まるで最初から存在しなかったみたいに」
リノルは震える両手を額に押し当てて目を覆った。
「それならいいじゃないか。もう終わったことだよ。頼むよフレディ、もう忘れてよ。ぼくが悪かった。ぼくがどうかしてたんだから……」
フレディが一方の手首をつかみ、乱暴に引きはがした。
「やめろ!なんでそんな言い方をするんだ?まるで浮気の言い訳みたいに聞こえるぞ」
そう言ってから、彼は自分でも狼狽したように手を離した。
「おまえは……おまえは、俺がやつに嫉妬してると思ってるのか? ああ、違うとは言えない。でもそれが理由じゃない」
「俺はどうしてもそいつの顔を一目拝まなきゃならなかった。おまえを傷つけたそいつを許すわけにいかないからだ。なあいいか、もしおまえが好きでそいつと寝ただけのことなら、俺は何も言うつもりはない」
リノルは両手を膝の上で握りしめ、涙の溜まりかけた目を暖炉の方に向けて顔をそらした。
「でも、ぼくは好きで彼と……」
「いや違う!おまえはそいつに何の興味もない。名前さえ知らない。自分でそう言ったじゃないか」
フレディはリノルの手を取って引き寄せ、自分の胸の前で握りしめた。
「リノル、俺にとっておまえは、おまえが欲しがったその馬より何千倍も高価なんだ。なんでそれがわからない?」
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