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3章(4)
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リノルはほとんど眠れないまま朝をむかえた。
男が一晩中まとわりついて放そうとしないからだ。
空が白み始める頃になって、ようやく男がいびきをたてはじめたので、リノルは自分の部屋に逃げ帰り、ぐったりと疲れ果てて浅い眠りに落ちた。
目を覚ますとあらためて自分のしたことを思い出して、髪をかきむしり、壁に頭を打ちつけ、屋敷の外に駆け出していった。
草地の外れに来ると、二、三の馬が行く手を阻むように近寄ってきた。
一頭の馬がリノルのそばにうずくまった。
それは昨日乗せてくれた馬だったかもしれない。
リノルはその首を抱いて、たてがみに頬をうずめた。
「かわいい碧い宝石さん! ぼくはあんなことには耐えられそうもないよ」
「いっそ咽喉でもかき切ってしまいたい……そうすればもうあの男にわずらわされることもなく、ぼくの心はこの肉体から自由になって、永遠におまえたちのそばで、おまえたちを愛して見守りつづけるだろう」
すると馬は、リノルの頬に口をよせて涙を舐めた。
その舌は黒くて長細く、蛇のもののように二股に割れていた。
リノルはそれを不審に思う以前に、馬のやさしさに感激して、濃紺のビロードのような頬や鼻に、しきりに感謝のキスを返した。
いつのまにか、まわりにいる馬の数が増えていた。
彼らがゆっくりと動き出す。
リノルは馬の首に腕を回したまま、彼らと一緒に歩いた。
馬たちは牧草地の向こうにある森の方へと移動していった。
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