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再構築 #兄
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_____バタン……
大きなドアが閉まる音。
弟が家を出て行った。
泣いてんじゃねぇよ。
泣きたいのはこっちだっつーの。
机の上に落ちた一滴の水滴を見て心の中でそう吐き捨てる。無性に腹が立ち、目の前に準備されていた冷めた昼食をゴミ箱の中へと全て振り落とした。
それでも怒りは収まらず、何か冷たいものを飲もうと冷蔵庫の前へ移動した。扉に貼られた1枚の紙が目に入る。
『作り置き一覧 (各4食分)
レンジか沸騰したお湯で解凍して食べてください。
栄養バランスを考えて食べること。』
男にしては綺麗で繊細な文字。弟の字だ。
紙には十数種類もの品目が記されており、試しに冷凍庫を開けてみると、そこには一つ一つ丁寧にパッキングしてある料理がキッチリと並べられていた。
余計な事しやがって…。
食べる気は毛頭無いが、”捨てる”という行為も面倒だと思い手をつけずにそのまま扉を閉じた。冷蔵室からミネラルウォーターを1本取り、広いソファの真ん中に座る。
キャップを開け、渇いた口に水を含んむ。
なんだか少し 心が落ち着いた気がした。
ペットボトルをテーブルに置き、テレビのリモコンを取ろうと手を伸ばすと、近くにあった白い封筒に気がついた。
…次は手紙かよ。
呆れながら中の紙を取り出す。
『兄さんへ……』
思っていた通り、生真面目な弟からの手紙だった。
先程の話と同じ様なことが綴られている。
2週間振りに話をした弟の姿が蘇った。
辛そうな、今にも消えてしまいそうな哀しい笑顔……
案外頑固で、何事も抱え込み
自分の中だけで解決しようとする性格。
本当に、あれが最後なんじゃ…
今追いかけないと、もう一生会えない様な気がする。
会いたくないのに、顔も見たくないのに、
自分の体は意に反して
外へ 外へと
その不可欠な存在を、本能で追った。
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