アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
04 (時雨side)
-
とは言っても、そんな勇気はなかった。
だって、完全に負け試合じゃないか。
それに今気持ちを伝えたら、海月はもっと傷つくだろう。
なんて……結局言うのが怖いだけなんだけど。
すると、海月が口を開いた。
「クラゲ……って、亮が…ずっと呼んでたんだ」
「……」
「俺、海月って、クラゲって読むから、ずっとからかわれてて……嫌だったんだけど、でも…亮になら、全然嫌じゃなくなってた。それで……くらげって、今日、初めて見た。けど、すごく綺麗で……綺麗で……俺、いっぱい亮のこと傷つけて、気持ちも踏みにじって……おんなじ名前なのに……なんか…き、汚いよなあ……って…おも…っ 「そんなことない!!」 」
「海月…!言ったじゃん俺!海月は綺麗だって!汚くなんかない…!!!」
泣きそうになりながら話す海月に思わず言葉を被せ、そして抱きしめてしまった。
海月は汚くなんかない。
だって本当に汚いのは……俺だから。
「俺……亮のこと、忘れたくないよ…っ、だけど、もう亮のこと思い出すの…、辛くて……」
海月が俺の背中をゆっくり抱き返して、少し声がかすれ始めたから、また泣き始めたのだとわかった。
「うん……忘れなくていい。焦らなくていい。今は辛いかもしれないけど、ゆっくり……がんばろ?俺、海月の味方だから……だから、いいよ。俺になんでもぶつけて。何度でも泣いていい。辛い時はなんでも言ってよ。」
「ん……、んぅ……、ごめん……、す、好き……亮……好きだよお……っ、会いたい……っ、もっと、もっと話したい……、もっと、抱きしめて……っ、もっと…うぅっ、ごめん……っ、ごめん……っ、」
海月はスイッチが切れたかのように、俺に西山への思いを泣き叫んだ。
こんなに、辛い事があるだろうか。
胸がひどく傷んだ。ただただ虚しかった。
好きな人の笑顔が見たくて、頑張って。だけど彼には忘れられない大切な人がいて。
自分でこうなることを望んだのに、こんなにも、辛いことだったんて。
海月は……綺麗だ。
西山のことをずっと思って、彼のことでずっと頭を悩ませて、辛くてもたくさん我慢して
とても綺麗だ。
本当に汚いのは……俺だ。
こうしてる間にも、海月の心にずっと寄り添っていればあわよくば…なんてこと考えているんだ。
守りたい。もっと海月の笑顔が見たい。なのに、なんでこんな黒い感情が渦巻くのだろう。
ああ、俺はなんて汚い人間なんだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
118 / 224