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「佐藤くん、こんにちは。」
放課後、弓弦と別れて帰り道を歩いてると、朝香さんに会った。
「今帰りなのね!学校楽しい?」
朝香さんはふふっと小さく微笑えむと、半径30cm程距離を詰めて聞いてきた。
前まで香っていた香水の匂いではなく、亮の匂いがした。
「楽しいですよ」
「そう…亮ちゃんもね、学校に行きたがってるのよ。でも……」
でも………そう言いかけると
朝香さんは恥ずかしそうに手を口元に当て、上目遣いで俺を見つめた。
黒くて大きくて綺麗な目に吸い込まれてしまいそうだった。
「ふふっ……、亮ちゃんったらね、あたしと一時も離れたくないって言って効かないの!学校行ったら朝香と離れるのが嫌だーって言って!」
朝香さんはキャッキャッと嬉しそうに話し、ふと長くて綺麗な黒髪を耳に掛けた時、首筋にキスマークか見えた。
「でね、ふふっ…これ言うの恥ずかしいんだけど、亮ちゃんがこの前ね、あたしのこと、愛してるって言ってくれたの!」
「良かったですね」
内心、冷静さを保つのに必死でうまく言葉が出なかった。
鈍器で頭を殴られたかのように頭が痛くなった。
心臓を強く握られてるかのように胸が痛んだ。
これ程辛いことがあるだろうか。
この人は、無神経なのか、なんなのか。
俺が亮を好きだとわかってて、わざと言っているのか。
「佐藤くんは、誰か素敵な人見つけた?」
「まだ見つけてないよ」
「そう…。佐藤くんも素敵な人を見つけて、幸せになってね!」
そう言うと、それじゃあ、と朝香さんは行ってしまった。
どんなに無神経なことを言われても、怒る気力も悲しむ気力も湧かなかった。
亮が幸せそうで良かった。
素敵な人……ね……
素敵な人を見つければ、ちょっとは楽になれる?
誰かと付き合えば、亮のことを忘れられる?
夕日が差し、自分の影が寂しそうに1人伸びていた。
寂しい。
初めて、この感情を痛いほどに痛感した。
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