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不信
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「どういうことだ?」
多分、俺の声は相当掠れていただろう。
こんなに必死な幹部連中の顔を見れば、この男が普通の淫売ではないことは判断がついた。
ただ、一様に何かを俺に隠したがっていた。
今までに見たこともない表情を浮かべたケイルが、下っ端風情の俺に頭を垂れて縋るような瞳で見つめる。
俺は背筋から戦慄のような震えが脳天まで突き抜けるような感覚を覚えつつ、ケイルを見返した。
何……だ。この男は……。何だというのだ。
「呪いが掛かっているんだ。主人の体液を与えられなければ欲望に狂うように。主人は王だった、王が殺されれば殺したものが主人となる」
静かに口を開いた、首領の顔は俺に救いを求めていた。
だとしても……何故?
「俺が、こいつの主人だっていうんスカ?待ってくださいよ、いくらアンタの頼みでも、俺、男なんか抱きたくねえですよ。大体、そんなことかしらが俺に頼むのはおかしくねえですか。大体、こいつはアンタの何なんですか?たかが、男娼のために、アンタが俺に頭をさげるなんて……」
ケイルの顔が歪む。苦痛を伴って俺を憎悪に近い瞳で見つめる。
「どうしてもか?ルイツ……俺がこうして頭をさげても断るというのか」
静かだが意思のこもった響きと気迫に俺は身を強張らせる。
多分、あれだけ美しい男であれば、抵抗も無く抱くことはできるだろう。
けれど、頼まれたからだけで、男を抱く趣味などはない。
「だから、何故アンタが……」
問いかけを無視するように、ケイルは首を左右に振って口を開く。
「じゃあ……お前に死んでもらうしか…」
ケイルが、一瞬の猶予も無く俺に剣を抜いて突き出したのを、慌ててすんでのところでかわし目を見開く。
避けきれず、肩から血が滴り落ちて床を汚す。
ケイルがここまでする男の正体が分からなかった。
「……おっかしいぜ。かしら、俺よりその淫売を選ぶのか」
声をついて出た言葉が泣き声を孕んだようにゆがみ、俺は頭を振る。
尊敬していた…。信頼もしていた。
ぽたぽた肩を伝っていく血の雫が零れ落ちていく。
くそ……
捨てられた。
俺は、この盗賊団から捨てられたのだ。
脇にさしていた剣を抜いて、俺はぐっと握った。
死にたくなかった。
ケイルは目を伏せて覚悟を決めたように俺におどりかかってきた。
剣筋は美しく、何度も避けたが反撃する隙がなかった。
ジリジリと少しづつバラックの奥まで追い詰められる。
大陸一の剣士ガイザック・スネイクの弟子だったケイルの剣技に、俺は勝てる見込みなどまるでなかった。
何でだよ……
あんたを尊敬してたんだぜ。ケイル。
俺は。いつか、あんたみたいになりてえって思ってた。
ケイル……なんであんな淫売のために、俺を捨てるんだ。
涙で視界が曇る。
バラックの奥で情事に耽っていた男の体につまずいて、剣を落とし、俺は尻餅をつき背後へと尻でずりさがる。
振りかぶられる、剣先の光。
俺は……ここで死ぬのか…
こんな……死に方は嫌だ!!!!
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