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ランチタイムside吉岡尋海
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「あっこれでいく?」
はい。自分が使っていた青い箸を俺に差し出してくる。
一瞬、旭が何をしたいのか分からなかった。時間が止まった錯覚に襲われる。
ゆっくり。ゆっくりと俺は言葉の意味を呑み込んでいく。
喉元を滑り落ちた瞬間、椅子から立ちあがっていた。
「なっななな!おっお前と同じ箸とか使えるわけねえだろ!」
たまらず叫ぶと教室中の視線が一斉に集まった。
静まり返るクラスメイトに俺は我に戻った。
気まずさを紛らわせる舌打ちをひとつこぼし、わざと乱暴に座りなおした。
すると見ていけないものを見てしまった彼らの間にまた騒がしさが戻る。面倒な奴らだ。
すぐに行動してしまうのが駄目だと自分でも反省する。
でも脳みそで片付ける前に、勝手に反応してしまうんだ。
だからつかわれない脳みそは腐っていくんだろう。
申し訳なさげに旭のほうを見る。
眉を垂らして卵焼きを見つめている。睫毛長い。
旭が不潔だとか決してそんなことはないんだ!ないんだ!
俺の心の準備ができてないだけで!
だから泣きそうにならないでくれ!
「手、俺、手で食べられるから、大丈夫だ。旭が箸使え」
手で旭の卵焼きを摘むのは行儀悪いし俺的にも嫌だった。
だって俺の手、汚いし。
もう引っ込みがつかない。
もたもたした空気を打ち消すため、卵焼きを拝借して口に放り込む。
間接キスを逃した後悔は深かったが、もしそんなことをすればぶっ倒れる自信があった。
ここは断っておいて正解だった。
卵焼きをかみしめながらひとりでにうんうん頷いた。
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