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ラストアップside吉岡尋海
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旭が買ってきてくれたお茶を飲んだら少しは気が楽になった。これ以上やつれた顔をしていると更に心配をかけそうだったので無理やり笑った。ぎこちない笑顔になってしまった。
「お茶ありがとな。もう元気になったよ」
空回りを見せて立ち上がろうと腰を上げかけるが、旭の次の言葉に驚きながらまた落ち着かせることになった。
「吉岡君って本当に優しいね」
「え?どこがだよ」
俺のどこが優しいというんだろうか。旭は変なことをいうな。
クラスメイトからも疎まれた存在である俺が優しいだなんて明らかに矛盾している。
旭はいい人だ。こんな俺でも平等な目で見てくれる。
たとえそれが勘違いだったとしても。旭が俺を優しいと言ってくれたことが何よりも嬉しかった。
優しくても、それはお前にだけで。
一番言いたい部分は素直に出て行ってくれなかった。この一言が言えればどれだけいいだろう。いっちゃだめだ。この緩やかな時間が崩れてしまうかもしれない。我慢をお茶とともに飲み干そうとした。
「全部。吉岡君の全部が優しくて陽だまりみたい。喋り方も歩き方もさりげないしぐさも。吉岡君本人が気にしていないだけだよ。僕から見たら、吉岡君は穏やかで優しいただの男子高校生に見えるなぁ」
だけど旭がそんなことを言うから。お世辞臭さも演技すらも取っ払った純粋な微笑みを湛えて、まっすぐ俺を見つめて囁くから。心の壁がヒビが入る音が本音を促した。
「俺は、好きじゃない人には、優しくしない」
愛おしさが夕暮れ色にこみあげてくる。
俺は本気で旭が好きだ。
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