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ep12
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母さんはしばらくキッチンにこもってからテーブルで待つ俺達に料理を運んできてくれた。
「ごめんね藤吉君、おかずちょっとしかなくて...」
「いえ、平気...です...!」
白米と味噌汁と鮭とスーパーで買ってきた揚げ物。
並べられた食べ物を見て藤吉君は目を輝かせた。
「そういえばお昼食べてなかったね」
「あら、もしかしてまた寝てたの?」
「いや寝たっていえば、寝た...ね?」
「多田...お前...」
意外に意地悪だな。
と俺を睨む藤吉君の顔に書いてある。
別にそんなつもりじゃなかったんだけど...。
じゃあ昼から授業に出ないでセックスしてたなんて親にどう言えばいいのか...。
「お昼ご飯食べてないならお腹空いたわよねぇ。...じゃ、いただきます!」
「いただきます」
「...いただきます...」
藤吉君はまだ俺に何か言いたげな顔で手を合わせた。
俺はその視線を流しながらご飯に手をつける。
「あ、そうだ、陸ちゃん」
「なに母さん?てかその呼び方やめて...」
箸を止めて話しかけてきた母さんの恥ずかしい俺のニックネームに文句を言って聞き返した。
「陸ちゃんって...ふっ...」
小声で笑う藤吉君に顔が赤くなってしまう。
「ごめんなさいね、いつもの癖で。ねっ、陸ちゃん」
「ふっ、はは...」
「母さん...!」
少し怒った俺に母さんは笑って「ごめんごめん」と謝りながら話を戻した。
「藤吉君とはいつ友達になったの?」
その質問に言葉が詰まる。
「全然友達が出来たって話聞かなかったから突然友達連れてきてビックリしたのよ?」
「えと...それは」
「普通に気があったみたいなかんじ...です」
困ってる口篭ってると藤吉君が微妙な顔をして答えた。
「学校で多田が...陸人君が本読んでて、その本おれも好きで喋ってみたら楽しかったんで」
「あっ、うん...今日の昼休み、たまたま藤吉君がうちのクラスに来て...」
とても自殺しようとした所を止められてこの関係が始まったとは言えない。
苛められている事は親にも言ってなかった。
本当なら俺が財布を取られたのを藤吉君が止めてくれた事を言いたい。
「そうだったんだ~!」
「ハイ...」
「うん...」
母さんは納得したのか満足そうに食事を再開した。
色々話をしながら楽しく晩御飯は終わった。
藤吉君は玄関で母さんに挨拶をしてから家を出た。
駅まで藤吉君を送ると言った俺も一緒だ。
「母さんが質問責めしてごめんね」
「ううん、別にいーよ。楽しかったし」
隣を歩く藤吉君の顔が柔らかく微笑む。
釣られて俺も笑った。
「よかったらまた来てよ」
「うん、今度はお土産買ってくね。...ポテチくらいしか買えないけど...」
「ふふ...」
二人で暗くなった道を歩く。
駅まですぐだ。
「多田、まだ死にたいって思ってる?」
「.....................」
いきなりの質問に考え込む。
「......まだわかんない」
「そっか...」
それだけ言って藤吉君は急に近付いてきた。
また苺の香りが鼻腔に広がって藤吉君と俺の唇が触れた。
「多田はおれが幸せにするよ」
唇が離れると藤吉君はプロポーズのような言葉を言ってまた前を向いてしまった。
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