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ep35
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「多田、おれ明日から一緒に帰れない」
ずっと無言だった藤吉君がストローから口を離して言った。
「まぁ別に帰る約束とかしてないけど一応言っとく」
「どうして?用事があるの?」
「ある」
「どんな用事?」
「教えない」
藤吉君はあっさり言い払った。
用事ってなんだろう。
恋人なんだから教えてくれたっていいのに。
機嫌が悪い理由がわからないモヤモヤ感もあって少しムカッとした。
「藤吉君、俺何かしたかな?」
「してない」
「じゃあどうして機嫌が悪いの」
「普通だろ」
「言ってくれよ」
頑なに自分の気持ちを言わないから俺もムキになる。
「恋人だろ」
よく考えずに勢いで言い放ってしまった。
藤吉くんが目を丸くしてバッと俺を見た。
「お、お前...」
「へ...?」
「うそ...」
笹山さんの声が聞こえて頭が冷静になって自分が今置かれてる状況を思い出した。
急激に冷や汗が湧いてくる。
「ふ、二人って...やっぱり...」
「ちがっ...!!違くないけど、でも...てかやっぱりって!?」
もしかして笹山さんは最初から勘づいてたのか。
女子ってすごい。
焦ってそんな場合じゃない事を考えてしまう。
「はー...もうホントにバカ...」
「藤吉君ごめん...」
思ったより情けない声が出る。
あぁどうしよう...もしかしたら笹山さんにバラされてしまうかも...
いやでも笹山さんはそんな人じゃ...
でもバラされたら俺は良いけど藤吉君に迷惑が...
「多田君」
「はい...」
「私、バラしたりしないよ」
項垂れてた頭を勢いよく上げて笹山さんを見た。
笹山さんはまるで女神のような笑みで口を開く。
「ちょっとびっくりしたけど、男の子が男の子を好きになるのって珍しい事じゃないよ」
そう...なんだ。
本当に笹山さんはいい人だ...
なんだか初めて藤吉君との関係を認められて嬉しいようなむず痒いような気持ちだ...
「多田はおれのこと好きじゃないよ」
は?
「じゃあおれ時間だから帰るわ」
にっこり笑って藤吉くんはお店を出て行ってしまった。
その後ろ姿を呆然と見つめる。
驚きすぎて声が出ない。
「た、多田君、どういう...」
どういう事かなんて俺が一番わからない。
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