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痛む右足をかばいつつゆっくり歩く
幸い、痛みの度合いで考えると足の骨は折れていないようだ
しかし、歩く衝撃があばらに響いてズキズキと痛む
多分これはあばらにヒビが入っている
大学が近いこともあってゆっくり歩けばなんとか辿り着くことができた
今日は一番最後に花園先生の講義があって、しかもそれまで全然先生と会えなかった
最悪な1日だと思っていたがいざ先生の講義となると憂鬱な気分が一瞬で晴れやかになる
心は晴れてもときどき身体に痛みが走ってしまう
ちょうど痛みを耐えているときに先生と目が合って咄嗟に表情を戻したものの先生の顔は俺の様子に訝しげに首を傾けていた
「これで授業終わりだ、かいさ〜ん」
しばらくしてその一声が室内に響くとみんなはそれぞれ自分のペースで講義室から出ていく
俺も痛む腕を懸命に動かして片付けを始める
最後に筆箱をやっと鞄の中にしまったとき誰かの影が頭上におりてきた
「おい」
誰かと思い、声をかけられて正体が判明する
顔を見なくてわかる
「花園先生…」
顔を見上げれば俺の心を見透かすように睨みつけていて目を逸らしてしまう
「お前講義中全然集中出来てなかっただろ」
「べ、つに…そんなことは」
「嘘つくな、俺と目が合ったらあからさまに誤魔化したくせによ。…つーか、ずっと気になってたけどよ、そのほっぺたに貼ってる冷えピタはなんだよ。熱あんならひたいだろ貼んのは!」
「………これは…ちょっとぶつけたから冷やしてるだけですよ」
「それも嘘だ。なんかお前の表情とか心読み取れるようになってきたわ。お前が嘘つくときは大体間があるし、目を一瞬逸らす」
確かに事実とは違うことを言うときは迷いが生じて間があいてしまう
しかし目を逸らしているのは全くの無意識で少し不意をつかれた気分だ
「………………」
「わけを言ってみろよ。親交を深めるんだろ?あんま人に言いにくいことも俺なら相談にのってやってもいい」
「い、いいですよ」
ありがたい申し出に断った俺に先生はしゃがんで言い聞かせるように俺より低い目線で見上げてくる
「仲良くなりたいはずの俺にも言えない?」
なな、な…なんかかわい(((
「………ここでは、ちょっと…人もいるし」
かわいい…もとい、先生の凶器にやられた
人がいることを確認するように室内を見回すとまだ学生が多数残っている
こんな状況では言えるものも言えない
それも他人に相談しにくいことだからなおさらだ
「そうかよ、じゃあ移動するか」
そう言って腕を引っ張られる
「―あ゙っ……!」
先生が掴んだ箇所はちょうど傷がある所で予想していなかった痛みに顔を歪める
「おいっ大丈夫か?そんなあちこち傷だらけなのかよ?」
「すみませ…っ、ゆっくりならついていけるんで誰もいない場所がいいです…」
「あ、あぁ……」
若干困った顔をした先生は俺の鞄をなにも言わずに持ってくれる
しかも右足を引きずって歩く俺に合わせて歩くペースを遅くしてくれる
この優しさが暖かい
もう家になんて帰らずに先生の近くにいたい
あんなに俺を除け者にする家にはいやだ…
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