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「夕焼け綺麗だなあー」
大学を出て先生の家への帰り道、前を歩く先生は伸びをしながらそんなことを呟く
「お前もそう思うだろ?」
問いかける先生にどう答えたらいいか迷ってしまう
「………そうですね。夕焼けは綺麗です」
本音を言うと、やはり夕焼けは嫌いだった
もうすぐ太陽が沈んで暗闇になってしまうから
いつも俺の周りは闇に包まれていた
幼い頃から階段下の物置にずっと閉じ込められていたが、そこは明かりもなく毛布1枚にくるまって淋しさに耐えるしかなかった
暗いものはその記憶を蘇らせる
それに茜色は元母の口紅の色で、南那さんのマニキュアの色だ
だから夜は嫌いだし茜色をうつす夕焼けも嫌い
先生に嘘をついて夕焼けに肯定的な返事をする
「お前今嘘をついたろ」
突然図星を突かれてドキリとする
「返事に間があんだよ間が。いいよ、本当のこと言えば。夕焼けは嫌いか?」
本当のことを言おうか迷った
やっぱり人の好きなものを否定するのは嫌だった。
でも先生は俺にしっかりと向き合ってくれようとしている
そんな先生に偽りの対応をしてしまっては失礼なんじゃないだろうか
「俺…夕焼け…嫌いだ」
良心と本心の狭間での葛藤の末、ポソリと本音を吐いた俺に、先生クスリと笑うと「それでいいよ」と優しく諭した
身体が痛んでうまく歩けない俺に合わせて先生はゆっくり歩いてくれる
しばらく歩いていると二階建ての白い家が目に入る
「あれ俺ん家」
先生は家が建ち並ぶなか、あの白い家を指差した
「先生の家こんな近くにあったんだ」
玄関前まで行く道中、先生は自分の身の上話を少し話してくれた
親が放任主義で、なのにそのくせ地味に過保護な気質なんだとか
この家も先生が自立するときに親が勝手に契約したらしい
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