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カイコウ.6
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「………………はぁ?なんだそれ」
「それに、てめぇには"親衛隊"がいんだろ。俺らがぬけたところで、痛くもかゆくもねぇだろうが。」
信じられなくて、伸也の表情をうかがうも、どうやら本気で言っているらしい。
無能ってなんだよ、大体、痛くもかゆくもなかったら、わざわざ声かけねぇっつぅの。
頭が痛くなってくる。
「……俺がてめぇらに"無能"なんて言ったことあったか?」
「…………ッ、それは、でも」
「俺は、"傲慢で俺様"なんだよなぁ?なら、お前らが本当に無能なら、そもそもそう言うはずだって、思わねぇのか?」
そう言うと、伸也は苦虫を噛み潰したような顔で押し黙った。
…………なるほど、そこは納得するんだな。
「…………まぁ、なにも弁明しなかったのは悪かった。けど俺は、てめぇらのこと、無能だなんて思ったことねぇ。
…………それに、1人で仕事なんて、まわしきれてねぇよ」
できるわけねぇだろ、そんなこと。
そう呟いた声は、掠れていて。
伸也が目を見開いた。
「……でも、仕事はまわって」
「風紀が、2人手伝ってくれてるからな」
その言葉に、ますます目を見開いて、その目は彷徨うように虚空を漂った。
「…………あいつらは、優秀だけどよ」
「……」
「正直、しんどい」
「…………!」
「お前らが、俺のこと嫌ってんのは知ってたけどよ、俺は、そもそも別にてめぇらのこと、嫌いじゃねぇんだよ」
その言葉に、伸也は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする。
……今日はこいつの間抜けな顔ばっかみてんな。
「……親衛隊の方が、生徒会より有能なんじゃねぇのか」
…………こいつ、まだ言うか。
正直腹立たしいが、俺が否定してこなかった噂とやらが影響しているのかもしれない。
それに。
そう聞いてくる、伸也の顔が。
…………不貞腐れた、子供みたいだったから。
「…………お前もそんな顔すんだな」
「は?馬鹿にしてんのか、てめぇ」
「べつに。親衛隊の方が有能って、常識的に考えて、そんなわけねぇだろ。
……大体」
続きを言おうかまよって。
ちらりと伸也を見つめる。
どうしたらいいのか、迷っているみたいな表情。
多分、蔓延した不信感を払拭することは容易ではなくて。
信用してもらうためには、自分の秘密も明け渡すことが必要なんだろう。
だから、覚悟を決めて。
「…………親衛隊とは、殆ど関わったこと、ねぇよ」
そう、言った。
「…………放課後は、なんで早く帰ってた?」
てっきり、"嘘ついてんじゃねぇよ"とでも言われると思っていたのに、伸也の口から出たのは、そんな言葉で。
「………………バイト、してんだよ」
渋々呟いたそれに、伸也はもう一度目を見開いてから。
「……………………ハァ、ほんっと、馬鹿みてぇ」
そう言って、髪をかき乱して、タバコを地面に擦り付けた。
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