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2017.02.24 0:15
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「御園、待って」
「待たない。今日はもうこれまで」
「いや、それはずりぃって」
「ずるくない。俺だって寒さを蹴ってまで、決心するために髪の毛を切ったんだよ」
どういう言い分だよって突っ込みたくても、色んなところがショートしたお陰で思ったことが口から出てこない。それでも、手だけはと必死に硬直してしまいそうな身体を動かして、彼の腕を掴んだ。
「んだよ、今日はもう…」
「お前なあ、いつもお前本意すぎるだろ。考えたことあんの?俺がそんな話聞いて、ああそうですかって、髪切ってまで面倒みた奴のこと、手ェ振って送り出せるとも思ってんの?」
「……っちぃよ」
「なんだよ」
喉奥につっかえていたはずの言葉は、まるでダムが崩壊したかの様に溢れ出てきた。堰き止められない、何年も積もり積もった想いが、決壊したソコから溢れ出て止まらない。
「だいたいっ…」
更に捲し立てるように続けようとした刹那、向かい合った彼の表情のせいで、またつっかえてしまった。
何でそんな、今にも泣きそうな顔をしてんだよ。
「…んでお前……」
「お前がどう思ってたかなんて理解してなかったし、俺自身のことだってまだなんだよ!どうしたら良いかも分かってねーし、とにかく!回ってねーんだって、まだ!」
泣きそうになりながらも威勢良く放たれた言葉は、全て彼の本心だった。愛していたはずの彼女に言われた衝撃的な言葉に、ジリジリと身を焦がされて身動きが取れなくなっていて、それを紛らわせようと過去を断ち切る様に切った髪の毛のせいで、色んな物が溢れ出てしまったのだ。
堰き止められていたのは、どうやら、俺だけではなかった。
「お前のこと、どう思ってるのかって考えた」
「うん」
「…好きなのかも、って」
「おう」
「…って、すんなり腑に落ちては、まだない」
「…あっそ」
「でも、なんか引っ掛かったのは事実だったんだよ。お前と居た時間ってスゲー長い訳じゃないけど、高校からの付き合いで7,8年経つけど、一緒にいて楽しいとか、まあ、思うし」
ただ、と息つく間もなく続けて、
「それが恋愛感情だとは言い切る自信は、まだないけど」
あっさりと言い切った言葉に、少し肩を落とした。
「…そんでお前はこれからどうしていきたいんだよ」
俺の気持ちを知った上で、自分の奥に眠っていた気持ちに気付かされて、どうなりたいんだ。
「…聞いてない」
「は?」
「っ、お前の俺に対する気持ちとか、聞いてねーし」
「……あ?」
「コエー顔してんなよ!」
いや、口にせずとも結構匂わせてただろ、今もさっきもお前が隙を見せてから、と言いかけたけど止めた。
確かに確証を得るような言葉を口にしてはいなかったかもしれないと自分自身でもまだ予防線を張った自覚はしていた。
「御園」
「……っなに」
「今からもしお前にちゃんと、俺の思ってることとか思ってたこととか、ぜんぶぜんぶ話したら、お前はどうにかしてくれる気あんの?」
「どうにか……」
「どうにかって、別に無理矢理には考えてねーけど!…その、少しは前と違った感じでって」
何でここまで口にしなきゃならないのか、と気恥ずかしさに弾けてしまいそうになりながら一気に言うと、目の前の彼はとうとう耐えかねて顔を下に向けてしまった。
「おまえっ…」
ずるい、と続けようとした言葉を遮ったのは、柔らかな肯定だった。
「……それなりに、善処します」
「い、言ったなこの野郎…」
お前と出逢って約8年、積もりに積もった想いがどんなものなのか!聞いてどうにもならないなんて、言わせてやらない。
言葉が魔法のようにお前に馴染んで、さっさとお前の言う善処とやらを俺に示してみせろ。
(好きとかそんな言葉じゃ表せない段階にまで来てるんだよ)
でも一先ずは、分かりやすい言葉で伝えてやる、そう気持ちを落ち着けて、息を吸って、吐いて。次に吐く息に音を付ける。
「……俺はずっとずっと、お前のことが、」
千切れ ちぎれぎれに、千切れる
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