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東京駅で… *愛があるなら僕は…②
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新幹線に乗っていた間ずっと降っていた雨は止み、
すっかり晴れた朝の9時、僕は東京駅に着いた。
八重洲口で神谷さんというスタッフさんと待ち合わせをしていた。
八重洲口はとても広く、改札を出るまでにも30分以上かかってしまったため、待ち合わせにもう既に10分も遅刻している。
やっとの事で改札口を出たものの、周りには忙しそうなサラリーマンしかいないし、前には見上げるほど大きなビルがそびえ立っていて、圧倒され上京の実感が嫌でも湧いた。
もうここには頼りになる人も、馴染みのある風景もない。
一人で生きていくという強い意志だけを胸に、
どんな困難でも立ち向かっていかなければいけないんだ。
「そういえば、改札を出たら電話しろって言われてんだっけ」
あっと思い出し、すぐさま神谷さんに電話をかけることにした。
「……あ、もしもし。立川 風馬です。遅くなってすみません」
そもそも既に遅刻している上に、改札を出た後もすぐに電話せずうろうろしていたので、怒られないか不安で、緊張して早口になってしまった。
「……そこの通りをずっと歩くとコンビニがあります。そこでゴムを買って、出て来なさい。車をコンビニの前に寄せておきます」
神谷さんは名乗りもせず、一方的に用件を言って電話を切ってしまった。
「ってか、ゴムって…。いきなりかよ」
仕方なく、通りをまっすぐ歩いていると、左側にコンビニがあった。車はまだ来ていないようだ。
とりあえず、言われたものを買いにコンビニに入る。
だが……
いくら店内を探してもゴムがない…
消耗品の棚にコーナーはあったものの、売り切れなのか値札だけが置いてある。
途端に心臓が鳴ってきた。遅刻もした上に、言われたこともできないなんて…絶対怒られる!
しかも、コンビニのレジには中国の方と思われる女の人しかいない…
あぁ、仕方ない。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥!
散々迷い躊躇ったあげく、在庫がないか聞いてみることにした。
「あの、、すみません。ゴムの在庫ってあります?売り切れのようなんですが…」
なんだよこれ、羞恥プレイかよ…
「ゴムなら、こちらに!」
意外と普通に対応してくれて、ホッとしたのもつかの間、手渡されたのは輪ゴムだった。
「あっ、そのゴムじゃなくて…その、、」
正直言って、朝からやめてくれー
言わせるなー
察してください…お願いだから!
その思いが通じたのか、
レジの人はカタコトの日本語で、
「コンドーム、、?ありますね!900円になります!」
と、わざわざ大きな声で言った…
そのまま、小さなレジ袋を持って赤い顔をしてコンビニを出た。
すると、目の前に黒い車が止まっていた。
さっきまで、雨が降っていたにも関わらず、ピカピカに光っている。
来る前に洗車でもしたんだろうか。
中には神谷さんだと思われる人がこっちを見ていた。
僕は急いで車の前に行って、運転席にいる人影に会釈をすると、ドアが開けられた。
「おはようございます。立川です。失礼します」
頷くのが見えたので、安心して入った瞬間、運転席から神谷さんが身を乗り出して僕を睨みつけた。
神谷さんは眼鏡をかけたいかにもサラリーマン風な、真面目そうな人だった。
しかも風俗店なのに、スーツを着ていてどこか怪しい雰囲気も同時に持ち合わせていた。
「…遅かったですね。人を待たせておいて、謝罪の言葉もないのですか?」
「すみません!ゴムがおいてなくて!」
「…その前に遅刻もしましたよね?前もって事前準備は然るべきことでしょう。迷うなど論外です。これからうちで働くのであれば、時間には厳しくお願いします。」
まるで何もかも見ていたかのように、弁解の余地もなく怒られてしまった。
ここは素直に謝ることに限る。
「遅れて申し訳ありませんでした」
「まぁ、今日のところは多めに見てよしとしましょう。ところでゴムは買えましたか?」
助手席に座るように促され、シートベルトを締めているとそう聞かれた。
「あっ、はい。最初は売り切れていたんですけど、店員さんに在庫確認してもらったらありました」
そう言うと、なぜか神谷さんは口角を上げ、 目を和らげて
"よくできました"と僕を褒めた。
「これはついさっき、私が買い占めてきたものです。一緒に持っておきなさい」
8箱ほどのゴムが入ったレジ袋を渡してきた。
…ということは
まさか、わざと僕に言わせるために!
ますます顔が赤くなる。
「店までは15分で着きます」
なんていうドSさ…はぁ。。。
僕はなんだか怖くなってきたが、
段々とお店に近づく車に乗りながら、
大学のため、家族のためだと心を固めた。
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