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BL Land「2014 Valentine」Tour{増刊特集}
はんぶんこ⑥
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視線に気付いた省吾がふと顔を上げ、正面から晃を見つめる。大きな瞳にじっと見つめられるのはどうにも照れくさく、必要以上にぶっきらぼうに言葉を投げかけてしまう。
「なんだよ」
「これから学校行っても晃が居ないのは、つまんねぇな」
「完治とか、バカ仲間がいるだろ」
「それはそれだ、晃は晃だ」
「そか」
省吾は時々突然可愛い事を言う。それがどれだけ晃の心を揺さぶるか、省吾は知らない。
「高校入ったら新しい友達沢山出来て、俺とあんま遊ばなくなるとか、やめろよ」
お願いなのか命令なのかわからない言葉を連ねる省吾に、ハイハイと適当に返事をしていると。
カレーを食べ終えた省吾は、コンビニの袋から先程購入した自分用の板チョコを取り出した。早速食後のデザートかと呆れ気味に、包みを開ける省吾を眺めていると、銀紙の包みのままパキンと2つに折られたそれは、晃の目の前に突き出された。
「晃に、やる」
晃は瞬きをひとつして、半分の板チョコとそれを差し出す省吾の左手をじっと見つめ、それから小さく首をかしげる。
「くれんの、なんで?」
別にいらねぇ、という言葉は飲み込んだ。
省吾は少し照れたように頬を染め、きゅっと口角をひきあげ、それから口を開いた。
「今日はチョコの日だろ、俺が一番好きなチョコ、半分晃にやる。だから、約束しろよ、卒業しても俺と遊ぶって」
なんだそりゃ。
晃は5秒程ポカンと静止し、それから肩を落として笑いながら息を吐いた。
「何だお前、これで俺を買収するつもりか」
「何だよ買収って、難しい事言うな」
むくれ始めた省吾がまた可笑しくて晃は笑った。それからチョコレートの半かけをうけとり、貰っておくよと目を細めて微笑む。
形は半かけの板チョコレート。
でもこれはきっと省吾の。
「お前の『一番』を、はんぶんこな」
そういうと、省吾は納得したように頷いた。
省吾が望んでも、望まなくても。
お前のそばにずっといると、晃は心の中で呟いた。
言葉にはしない。それはとても繊細で、少しでも余計な力が加わったら、簡単に壊れてしまいそうで、晃はいつまでもその気持ちを言葉には出来ない。
けれど。
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